■「同性愛者のイスラム教徒?」

 このイスラム教センターがありがたくない形で注目を集めるのはこれが2度目だ。

 2014年5月に内戦が続くシリアで自爆攻撃を行った初めての米国人、モネル・モハマド・アブサルハ(Moner Muhammad Abusalha)は、シリアに発つまでこのセンターに足しげく通っていた。

 マティーン容疑者はアブサルハを知っていたとみられており、オーランドの同性愛者向けナイトクラブ「パルス(Pulse)」で12日に銃乱射を開始した後、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」に対する忠誠を表明していた。

 同容疑者がどのような精神状態にあったのか、そして同性愛とどのような関係を持っていたのかは、いまだ謎に包まれている。同性愛者の出会い系アプリを使っていた、他の男性を口説いていた、「パルス」の常連だったという複数の証言がある。

 しかし、フロリダ州の大西洋岸にあるセントルーシー(St Lucie)やフォートピアス地域では数少ない同性愛者向けのバー「タートル・テイルズ(Tattle Tails)」では全く知られていなかった。

 オーランドの銃乱射事件は、犠牲となった愛する家族の性的指向を初めて知ることになった家族には悲劇だ。その一方で、同性愛者がヒスパニックコミュニティーに必ずしも受け入れられているわけではないことが明らかになった。

 ムスリム(イスラム教徒)の間では、こうしたタブーが明言されることは多い。同容疑者の父親のセディク(Seddique Mateen)さんは犠牲者に対する連帯を示す一方で、同性愛を公然と非難した。

 イスラム教センターのバクトさんは、この問題について、「同性愛者のイスラム教徒? 一人も会ったことがない。きっと隠れているんだろう」と語った。(c)AFP/Thomas URBAIN