【6月4日 AFP】ペルーの首都リマ(Lima)の南東に、丘陵の斜面に沿って造られた壁がある。地元では「恥の壁」と呼ばれている。

 上部に有刺鉄線が張り巡らされたこの壁は高級住宅地のラスカスアリーナス(Las Casuarinas)地区と、貧困層が暮らすパンプロナアルタ(Pamplona Alta)地区を隔てている。

 全長約10キロに及ぶこの壁は、大邸宅やプール、青々とした芝生があるラスカスアリーナス地区で犯罪が起こるのを防ごうと5年前に建設された。

 しかし壁の反対側で電気も水道もないほこりまみれの掘っ立て小屋に暮らす7500人にとっては、犯罪の引き金になる社会的格差を目の前に突き付けるものでしかない。

 首都で成功しようとペルー北部から引っ越してきたというパンプロナアルタの女性は、「壁が建てられた時は悲しかった。好きこのんでみじめな生活をしているわけではない。仕事が必要だからここにいるだけなのに」と嘆いた。「あの壁のせいで、お前は貧乏だって言われ続けている気がする」

 多くのペルー国民は今年4月10日、経済成長の鈍化に歯止めをかけてくれる新大統領の誕生を願って投票所に行った。しかし国内の何百万人は、そもそも経済成長を実感したことがない。

 住民らの話では、パンプロナアルタに選挙運動に来た候補者は一人もいなかったという。選挙ポスターが貼られたままの木製の掲示板を、自分たちの小屋の壁にした人もいた。

 英非政府組織(NGO)のオックスファム(Oxfam)の研究者アルマンド・メンドーサ(Armando Mendoza)氏は「再び経済を成長させるには、不平等はどうしても解決しなければならない重大問題」なのだが、「そのことを政治家は理解していない」と指摘する。

 有権者2300万人の支持を得たい候補者らは、生活の向上を公約。現在収監されているアルベルト・フジモリ(Alberto Fujimori)元大統領の長女で、保守派のケイコ・フジモリ(Keiko Fujimori)氏(41)は、「成長のアクセルを踏み込んでいく」と宣言し、零細企業への減税を約束した。

 第1回投票の得票率で首位に立ったケイコ氏は、2位だった中道右派のペドロ・パブロ・クチンスキ(Pedro Pablo Kuczynski)氏(77)と6月5日に行われる決選投票で対決する。クチンスキ氏も、経済を活性化させて成長に弾みをつけることで、300万人分の雇用を創出すると公約している。(c)AFP/Moises AVILA, Roland LLOYD PARRY