「パナマ文書」で所有者特定、モディリアニ作品を押収 スイス
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【4月12日 AFP】第2次世界大戦(World War II)中にナチス・ドイツ(Nazi)によって略奪されたとみられる伊画家アメデオ・モディリアニ(Amedeo Modigliani)の絵画が、スイス・ジュネーブ(Geneva)で押収された。当局が11日、明らかにした。パナマの法律事務所から流出したいわゆる「パナマ文書(Panama Papers)」により、現在の所有者が特定されたことがきっかけだったという。
ジュネーブ司法当局の報道官がAFPに明かしたところによると、「パナマ文書に関連した新事実の枠組みの中で、刑事手続きが始まった」という。同報道官は、問題の絵画は「先週後半に押収された」としている。「パナマ文書」問題では、法律事務所モサック・フォンセカ(Mossack Fonseca)から流出した膨大な内部文書から、世界中の有力な富豪がオフショアで行っていた闇取引が明らかになった。
捜査が始まったのは、こうした文書の一つによって、厳重な警備が敷かれたジュネーブの自由港(外国貨物に関税を賦課しない商港)に保管されているモディリアニ作品が、オフショア企業のインターナショナル・アート・センター(IAC)を通じ、富豪で著名美術品収集家のデービッド・ナーマド(David Nahmad)氏の極秘所有物とされていることが明らかになった後だった。
現地メディアによると、問題の絵画は、口ひげを生やして帽子をかぶり、つえを手にした男性を描いた「つえを突いて座る男(Seated Man With A Cane)」という1918年の作品で、2500万ドル(約27億円)相当の価値があるとされる。
略奪された財産の追跡を支援するカナダの団体モンデックス(Mondex)は同作品について、1939年にフランス・パリ(Pairs)から逃れたユダヤ人美術商からナチスが略奪したものだとしている。
モンデックスは2011年以降、この美術商の孫にあたるフランス人農業従事者が絵画を取り戻せるよう米当局に協力を要請していたが、米当局も現在の所有者を特定しきれずにいた。
所有者の可能性があるとして名前が挙がっていた大富豪のナーマド家は米裁判所に対し、作品を所有しているのは自分たちではなくIACだと主張していた。同社の設立を手掛けたのは、パナマ文書の流出元であるモサック・フォンセカだった。報道によると、IACは同作品を1996年に競売で落札したという。
だがスイス日刊紙ルマタン(Le Matin)が先週公表したパナマ文書の一つから、IACの単独所有者がデービッド・ナーマド氏であることが明らかになった。
自身もユダヤ系であるナーマド氏は、「私が(ナチスの)略奪品を所有していることを知ったなら、夜も眠れないだろう」と述べていた。ナーマド家はジュネーブの自由港に、パブロ・ピカソ(Pablo Picasso)の作品300点を含む約4500点の美術品コレクションを保管している。(c)AFP