■痛みを伴う電気ショック

 この問題の研究するためドバーカー氏と共同研究者らは一連の巧妙な実験を考案した。45人の被験者にコンピューター画面に表示された2個の石の画像を見せ、どちらの石の下にヘビが隠れているかを質問した。実験を通じて被験者にこの質問を数百回繰り返した。

 石の下にヘビがいた場合、被験者は──たとえどちらの石の下にヘビがいたか正しく予測していても──ハチに刺されたくらいの痛みを感じる電気ショックを手の甲に受ける。

 研究チームは複雑な数理モデルを用いて、被験者がヘビがいるかどうか予測する手掛かりになる複数のパターンを作成した。これらのパターンは完全に無作為なものもあれば、経験を積むうちに予測可能になるものもあった。

 ドバーカー氏は「今回の実験から、不確実性がストレスに及ぼす影響ついて結論を引き出すことができる」と話す。「電気ショックを受けるか受けないかが確実に分かっている場合より、電気ショックを受けるかどうか分からない場合の方がはるかに悪いということが明らかになった」

 研究チームは、瞳孔径の変化の測定とアンケート調査によってストレスレベルの変化を調べた。瞳孔径の変化は、脳内でのノルアドレナリン放出(ストレスがかかった状態)の指標となる。

 驚くべきことに、被験者が予測していた通りに電気ショックを受けた場合のストレスレベルは、電気ショックを受けると予測していたのに実際には受けなかった場合とほぼ同程度だった。「人間がストレスを感じる上で電気ショックと不確実性はほぼ同等の働きをしているようだ」とドバーカー氏は語った。

 不安のレベルが高い被験者ほどヘビがいるかいないかを当てるゲームの得点が高かった。このことは、人間が進化の過程で生き残る上で、ストレスが何らかの形で人間に有利になるように作用した可能性を示唆している。

 論文の共同執筆者で、ロンドン大ユニバーシティー・カレッジのスベン・ベストマン(Sven Bestmann)氏は報道向け声明の中で「適切なストレス反応は環境に存在する不確実で危険なものについて学ぶために役立つかもしれない」と述べている。(c)AFP/Marlowe HOOD