【3月24日 AFP】脳へのダメージを記録するヘッドバンド型の装置が、オーストラリアで開発されている。ここ数年、サッカーやラグビーをはじめとする競技では、頭部へのダメージが選手に与える影響について、世界的に関心が高まっている。

 実証段階にある「brainBAND」プロジェクトでは、頭部に装着したセンサーが、フィールド上で選手が受けた衝撃を記録する。そのデータは、リアルタイムで医療チーム、監督、審判に送られるという。

 豪スウィンバーン工科大学(Swinburne University of Technology)で研究を行う脳科学者のアラン・ピアース(Alan Pearce)氏は、AFPの取材に応じ、現在のラグビーの試合で、タックルを受けたり頭部に外傷を負ったりした選手がプレーを続行するかは、ライン際での話し合いという主観的な方法によって決められていると問題点を指摘した。

「それはプロの話ですから、アマチュアでは…選手の状況をきちんと判断する人がいないのです」

「装置を使えば、リアルタイムで選手が頭部にダメージを受けたという情報が入ってきます。これによって、プレーをやめさせるべきという客観的な判断ができるのです」

 衝撃の度合いがLEDライトの点灯によって示されるため、「週末の試合で頭部にダメージを負った場合、実際にその試合で記録したデータを病院や専門医に持っていって、より正確な診断に役立てることができる」とピアース氏は説明する。

 これから進化を続ける装置の原型ともいえるヘッドバンドは、微調整のため、オーストラリアのアマチュアリーグで試験運用されており、将来的には、蓄積された小さなダメージも記録として残すことができるようになるという。

「1度や2度の大きなダメージではなく、継続的に何度も繰り返される頭部への衝撃が、直後の症状として出なくても、多くの選手が抱える長期間の問題に発展することがあります」

 工業デザイナーのブレイデン・ウィルソン(Braden Wilson)氏、サムスン・オーストラリア(Samsung Australia)と共にデバイスの開発を行うピアース氏は、これから多くの試験を重ねなければならないと話している。

 それでも同氏は、繰り返し起こる脳振とうによる影響を理解することで、どんなレベルの競技においても、大けがを防ぐことにつながるだろうと信じている。

 ラグビーリーグ、オーストラリアンフットボール・リーグ(AFL)を経て、現在はラグビーユニオンでプレーするイズラエル・フォラウ(Israel Folau)は、これまでのキャリアで脳振とうを起こしたことがないのは幸運だとしており、豪版のデーリー・テレグラフ(Daily Telegraph)紙に対して、「スポーツにおける脳振とうについての意識を高めるのは、良いことに他ならない」と述べている。(c)AFP