■欧州に根強く残る人種差別

 米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)は、ヘッドコーチ(HC)を決定する際、人種的少数派も候補に含めることを各チームに義務づけた「ルーニー・ルール(Rooney Rule)」を2003年に導入。イングランド・プロサッカー選手協会(PFA)も同じルールの採用を求めているが、欧州でこのような考え方は多くの支持を得られていない。

 アモカチ氏は熱意を持ったアフリカ人監督に対し、イングランド・プレミアリーグやドイツ・ブンデスリーガで職に就くことは忘れて、規模の小さなクラブからキャリアをスタートするよう呼びかけている。「人種差別はもちろん存在している。だけど、それを気にしない人たちも存在している。彼らには理解があり、純粋に指導者を求めているんだ」

 練習が終わると、アモカチ氏は分厚いコートを着て近所のジムまで雪道を歩く。その道中では、アイスホッケーのリンクの中から子どもたちが笑顔でアモカチ氏に手を振っていた。

 フィンランドではアイスホッケーの人気が最も高く、2部リーグでプレーするサッカー選手の給料はほんのわずかだ。エルクレスの年間予算は8万ユーロから12万ユーロ(約1000万円から約1500万円)とされ、クラブから唯一給料が支払われているアモカチ氏の待遇も、プレミアリーグのエバートン(Everton)などでプレーしていた現役時代からは遠くかけ離れている。

「彼らには私の給料は支払えない。だから多くのことを犠牲にしなければならない。だけど、それと引き換えに監督としてのキャリアを積む機会を与えてくれる。これはスタートラインであって、私自身が、そしてアフリカ人監督が必要としているものだ」

「これはアフリカ人としての自分をアピールする絶好の機会なんだ。私が成功すれば、私やナイジェリア人監督だけでなく、すべてのアフリカ人監督にドアが開かれることになる」

(c)AFP/Anne KAURANEN