【3月10日 AFP】国際NGO「The European Council on Tolerance and Reconciliation(ECTR)」は9日、人種差別に立ち向かった功績を称え、サッカー選手のサミュエル・エトー(Samuel Eto'o)にヨーロピアン・メダル・オブ・トレランス(European Medal of Tolerance)を贈呈した。同団体は、欧州のサッカー界にいまだ人種差別が存在していることについて、警告を発している。

 スペイン1部リーグのFCバルセロナ(FC Barcelona)でプレーした経験もある元カメルーン代表ストライカーは、ウィリアム英王子(Prince William)とキャサリン妃(Catherine, Duchess of Cambridge)夫妻の住まいである、ロンドン(London)のケンジントン宮殿(Kensington Palace)で行われたガラディナーに招かれ、同賞を授与された。

 現在はイタリア・セリエAのサンプドリア(Sampdoria)でプレーする33歳のエトーは、スペイン時代に悪質な人種差別行為を受け、ピッチを立ち去ろうとした苦い経験を持つ。

 アフリカ年間最優秀選手に4度選出されているエトーは、「サッカー界の人種差別や偏見という意味で、昨年はとりわけ厳しい一年だった」とする声明を出した。

「選手として、モラルを守った行動を取らなければならない。観客は僕らを見ている。サッカー界が象徴する多民族社会で、僕らは寛容さを示す良いお手本にならなければいけない」

 エトーは、レアル・マドリード(Real Madrid)でキャリアをスタートさせたものの、名を上げたのはFCバルセロナでの活躍だった。その後も、イタリア・セリエAのインテル(Inter Milan)、イングランド・プレミアリーグのチェルシー(Chealsea)、エバートン(Everton)などの、名門クラブでプレーしてきた。

 FCバルセロナ時代には、レアル・サラゴサ(Real Zaragoza)のサポーターから、自身を猿扱いする差別チャントを受けるなど、つらい体験をしたエトー。2006年には、サラゴサのサポーターによる執拗(しつよう)な人種差別行為に耐えかね、審判に試合の続行が不可能だと申し出ることもあった。この試合では、チームメートがエトーを説得し、なんとか最後まで試合を戦い抜いた。

 ECTRで代表を務める欧州ユダヤ人会議(EJC)のモーシェ・カントール(Moshe Kantor)会長は、「この不安な時代、サッカー界には人種差別の居場所はないという明確なメッセージを伝えることが重要」と語り、「チェルシーやウェストハム(West Ham)のファンによる事件を目撃したばかり。人種差別や、反ユダヤ的な考え方が、サッカー界に根強く残っているということ」と警鐘を鳴らした。(c)AFP/Robin MILLARD