【2月26日 AFP】米アカデミー賞(Academy Awards)にトランスジェンダーのミュージシャンとして初めてノミネートされたAnohni(アノーニ)が25日、授賞式のボイコットを示唆した。授賞式でのパフォーマンスを依頼されなかったことが理由とみられる。

 Anohniは、バンド「アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズ(Antony and the Johnsons)」のメンバー、アントニー・ヘガーティ(Antony Hegarty)としても知られる。

 歯に衣着せぬ物言いで知られるAnohniは、音楽サイト「ピッチフォーク(Pitchfork)」に寄稿したエッセーの中で、ロサンゼルス(Los Angeles)に向かう飛行機に搭乗する際、「困惑と怒り」に圧倒されたと書いた。

 エッセイには、羞恥心で「トランスパーソンの私を不適当と断言した米国を思いだした。私は空港できびすを返し、自宅に帰った」とあり、その翌朝に、自身がトランスジェンダーであることがアカデミー賞公式ウェブサイトのトリビア欄に書き加えられ、「傷口に塩を塗られたようだった」とつづられている。

 今年のアカデミー賞では、主要部門のノミネートが2年連続で白人のみとなったことを受け、著名なアフリカ系米国人らが授賞式のボイコットを表明している。

 Anohniは、地球温暖化や密猟、その他の人的災害を通じて、人類がいかに他の生物種を絶滅に追いやったかを描いたドキュメンタリー映画『Racing Extinction』の主題歌「Manta Ray」で、歌曲賞にノミネートされている。

 同賞の他の5人の候補者のうち、レディー・ガガ(Lady Gaga)やザ・ウィークエンド(The Weeknd)、サム・スミス(Sam Smith)らは、全世界に中継される同授賞式でパフォーマンスを披露する予定となっている。

 Anohniは、自身がトランスジェンダーであることが直接の理由で除外されたわけではないと認識しており、また米国では比較的知名度が低く、環境破壊をテーマにした楽曲を歌っているので、広告スペースが売れないことも理解している。

 ただ、その背景にある「真実」は無視することはできないとしながら、様々な事象の積み重ねである、結果としての地球温暖化を例に挙げた。

 Anohniは、アカデミー賞にノミネートされた初のトランスジェンダーのミュージシャンだが、全体としては史上2人目となる。(c)AFP