【2月1日 AFP】フランソワ・オランド(Francois Hollande)仏大統領は1月31日、何十年にもわたって暴力を振るわれた末に夫を殺害し、禁錮10年の判決を受けて服役中の女性受刑者(68)に恩赦を与えた。大統領府が同日、発表した。

「例外的な状況を前にして、大統領はジャクリーン・ソバージュ(Jacqueline Sauvage)受刑者が一刻も早く家族の元に戻れるよう望んだ」と、大統領府は声明で説明した。

 弁護士がAFPに語ったところによると、大統領の恩赦は刑期の減刑で、ソバージュ受刑者は3年以上を刑務所で過ごした後、4月中旬に釈放される見込み。

 ソバージュ受刑者は、暴力的なアルコール依存症の夫と47年にわたり結婚生活を送っていた。娘3人と共にレイプされたり殴られたりしたほか、息子も虐待されていたという。同受刑者は2012年9月10日、息子が首つり自殺した翌日に、夫の背中をライフル銃で3回撃って殺害した。14年10月に殺人罪で禁錮10年の刑を言い渡され、15年12月の控訴審でも正当防衛だとする主張が棄却されていた。

 この事件はフランス国内で注目を浴び、ソバージュ受刑者の釈放を求める嘆願には40万人以上が署名。オランド大統領は恩赦発表の2日前、ソバージュ受刑者の3人の娘や弁護士と面会していた。

 事件をめぐっては、正当防衛の適用範囲を「暴力被害に遭った女性」をめぐる事件にも拡大して適用するよう女性権利団体などが訴えてきた。ソバージュ受刑者の弁護を担当するナタリー・トマシーニ(Nathalie Tomasini)氏も、裁判の際に「夫婦間暴力における正当防衛の適用範囲を広げる」よう求めていた。

 フランスの法律では、正当防衛として認められるのは受けた身体的攻撃と同程度の直接的な反撃行動に限定されている。ソバージュ受刑者のように、長年にわたって繰り返された暴力に対抗して相手を殺害した場合は、この要件に適合していなかった。(c)AFP/Christian GAUVRY