【12月17日 AFP】デンマーク領グリーンランド(Greenland)の氷床では、2003年~2010年の期間に、20世紀全体のペースの2倍の速さで質量が失われたとの研究結果が16日、発表された。氷床の融解は、陸地を浸食する海面上昇の重大な一因となる可能性があるとされている。

 英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された研究論文によると、グリーンランド氷床の減少は、1990年~2010年の期間に世界平均で25ミリの海面上昇を引き起こしたが、これは主に表面融解によるものだという。失われた質量は、合計で9000ギガトン(9兆トン)超だった。

 これは、氷の融解による減少量から、降雪や降雨による氷の増加量を差し引いた「純損失」だ。

 欧州とカナダの研究チームによると、小氷期後にグリーンランド氷床が後退を開始した19世紀末以降の氷床減少をめぐり観測に基づくデータが提示されたのは、今回の研究が初めてだという。

 今回の研究は、地球温暖化に起因する海面上昇の予測で考慮すべき「氷床の消失」での過去と、そして予想される未来の状況に関する貴重な知見をもたらすものだ。

 国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が作成した各報告書には、グリーンランド氷床に関する十分なデータが記載されていないと研究チームは指摘する。

 論文の共同執筆者、デンマーク自然史博物館(Natural History Museum of Denmark)のクルト・キアル(Kurt Kjaer)氏は「海面の今後の変化を予測し、その予測を信頼の置けるものとするためには、過去に発生したことに関する理解が不可欠だ」と述べる。

 これまでの研究は主に数理モデルに基づくものだったが、今回の最新研究では、過去に撮影された航空写真から得られたデータを、人工衛星やその他データと組み合わせて使用された。

 航空写真では、後退する氷が数十年の間に地形に残した痕跡を調べることができた。

 氷床から失われた氷の質量は、1900年~1983年の期間は年間約75.1ギガトン、1983年~2003年は年間73.8ギガトンだった。しかし、2003年~2010年は年間186.4ギガトンに上っていたことを、研究チームは突き止めた。

 この研究論文にについて、ネイチャー誌の要約記事では「最近観測された、グリーンランド氷床の質量消失量の増加と、その結果として生じた海面上昇の加速は、小氷期以降で初の現象と思われると、論文の執筆者らは説明している」とあり、また「観察される質量消失と海面上昇の全体的傾向は、当分の間継続する可能性が高いことを、論文執筆者らは示唆している」とも記されている。(c)AFP