■原子力を電源構成の中核に据えることが必須

 米航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙研究所(Goddard Institute for Space Studies)の所長を1981年~2013年まで務めていたハンセン氏は3日、地球温暖化を促進させる温室効果ガスの排出を急速に削減するためには、安全性への懸念から物議を醸している原子力発電を世界のエネルギーミックス(電源構成)の中核に据えることが必須と述べた。

「中国やインドなどの急速に発展している国々からの排出量を注視するだけでよい。ほぼ全体が(化石燃料の中で炭素集約度が最も高い)石炭だ」と指摘し、「気候問題の解決には、炭素を排出しない電力が必要だ。原子力の助けなしに、中国やインドで温室効果ガスを削減することは、絶対に無理だ」と述べた。

 現在、エネルギー生産と消費の80%は化石燃料が占めている。太陽光や風力発電は急速に拡大し、投資を引き付けているが、原子力を除いたエネルギーミックスにおける再生可能エネルギーの割合は依然として5%に満たない。

■原子力の安全性に懸念

 しかし、気候問題の解決方法が原子力への依存にあるとの考えに、すべての人が同意しているわけではない。

 仏エネルギー情報調査組織「WISE-Paris」は報告書をまとめ、2011年の東日本大震災に伴う福島第1原子力発電所事故で実証されたように、原子力には安全性への懸念があり、有効なエネルギー源としては除外されると結論付けている。報告書は、国際環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)など複数の非政府組織(NGO)からの依頼で作成された。

 報告書はさらに、再生可能エネルギーと比較して原子力のコストが法外に高いことを指摘しているほか、関係業界が気候変動との闘いにおける原子力の貢献を誇張しているとも批判している。(c)AFP/Marlowe HOOD、Martine PAUWELS