【AFP記者コラム】エルサレム、恐怖する「群衆」となった特派員
このニュースをシェア
■インティファーダの影
あの日、支局を出た私は頭の中で、テルアビブ(Tel Aviv)の家まで電車で帰ろうと言っていた。暴力が激化しているときは、たとえ少し時間がかかるとしても、バスよりも少しは安全だからだ。だが、私は考えを変えた。恐怖心に屈してはいけないと自分に言い聞かせたのだ。他者に対する恐怖、イスラエル人に対する恐怖、私が記事の中でいつも書いている恐怖心のことだ。
イスラエルは小さな国で、イスラエル人のほぼ全員が、パレスチナ人による第一次インティファーダと第二次インティファーダの破壊の影響を受けている。二つのインティファーダはイスラエルの占領に抵抗する民衆蜂起で、それぞれ1987年と2000年に始まった。その暴力に巻き込まれるという恐怖が今、再びイスラエル人を捕えている。現在、落ち着いたテルアビブ郊外のショッピングモールからイスラエル中部の隔絶された道路、エルサレムのバス車内まで、国内のさまざまな場所で襲撃が起きているためだ。そうした襲撃はいつでもどこでも起こり得るし、誰でも被害者になり得る。私も含めて。
私がテルアビブ行きのバスに乗った途端、叫び声と銃声、それからサイレンの音を聞いた。人々があらゆる方向に走っていた。爆弾なのか、誤った警報なのか、すでに終わったのか、まだ起きている最中なのか、私には分からなかった。混乱の真っただ中で私は自分が何をしているのかも皆目、分からなかった。
放心状態となった私が反射的に最初にしたことは、エルサレム支局長のローラン・ロサーノ(Laurent Lozano)に電話して、自分が目にしていることを伝えようとすることだった。だが、彼は私に安全な場所へ移るようにと速やかに告げた。
AFPの同僚たちの日々の記事からも分かるように、この地域にいるジャーナリストは、よく暴力の目撃者となる。記者の仕事とは暴力が起きている現場へ行って、何が起きたのかを観察し記録することなのだから、それは当然だ。
しかし、取材対象ではない暴力に遭遇したとき、それはまったく別の世界にいることになる。あの日、現場から10キロ離れたところで警察が更新する報道発表を追いながら、私がいる場所で何が起きていたのかを教えてくれたのは、ローランだった。
自分の置かれた立場が分かってきた頃、誰かが「中へ入れ、皆、中へ入れ!」と叫ぶのが聞こえた。マスクをした重武装の男たちがそこらじゅうにいるようだった。自分が見ているのは、イスラエル警察の対テロ特殊部隊、ヤマム(Yamam)の取り締まりだとすぐに気付いた。彼らはバスターミナルに隠れているかもしれない他の襲撃者を探していたのだった。