故郷追われるアエタの人々、フィリピン最古の先住民
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■自分の故郷を「不法占拠」
フィリピンでは1997年、アエタを含めた同国の少数民1500万人に対して、先祖代々の土地への権利が法律で認められた。しかし、膨大な申し立てのうち、これまでに権利が付与されたのはほんのわずかだという。
推計700万人いるとされるアエタの人々は、それぞれ孤立した小さな共同体に暮らしており、森林や野原を切り開きながら焼き畑農業をして季節ごとに移動する。外の世界との接触も限定的だ。
同国政府に対し、セラーノさんの故郷、サパン・ウワクや周囲のアエタ集落は、計1万7000ヘクタールの権利を申し立てた。しかし政府は今も、多くの境界線を定めておらず、民間デベロッパーによる「侵入」も懸念されている。
ピナツボ山一帯のアエタの共同体全体としては、これまでに計3万9000ヘクタールの権利を獲得し、採石場やゴルフ場、リゾート地などからリース料として定収入が入るようにはなった。それでも、手続きには数年を要し、厄介なことに変わりはない。
法律では先祖からの土地の権利は売買できないと定められているが、なぜか外部の者が権利を取得するケースが後を絶たない。フィリピン大学の人類学者、シンシア・サヤス(Cynthia Zayas)氏によると、なかには教育を受けていないアエタの人々をだまし、二束三文で土地の権利を取り上げる悪徳業者もいるという。
「民間のデベロッパーがアエタの土地をむしばんでいる。立場が逆転し、アエタの人々は自分たちの土地を『不法占拠』しているようになってしまう」(サヤス氏)
以前は警官だったという、あるアエタの集落の長老、ロマン・キング(Roman King)さんによると、時には、政府内の有力者が関わっていることもあるとされる。そして「我々はフィリピンに最初に住んでいたのに、今や自分の故郷でまるでよそ者だ。土地を失えば我々は行くところがない。我々が路上で物乞いをする姿をいっそう目にすることになるだろう」とコメントした。(c)AFP/Cecil MORELLA