【10月5日 AFP】韓国・釜山(Busan)で開催されている第20回「釜山国際映画祭」でこのたび、これまでに発表されたアジア映画のトップ100作品が発表された。作品選出にあたっては、アジアの著名な映画監督やアジア映画を専門とする外国人批評家らが、それぞれ10作品を選んで投票する方法がとられた。

 リスト入りした作品を国ごとに見ると、日本が26作品でトップ。イランが19作品、韓国が15作品と続いた。選出された作品の中で最も古いものは、1932年に小津安二郎(Yasujiro Ozu)監督が手掛けた『大人の見る繪本 生れてはみたけれど(I Was Born, But)』で48位だった。

 また、アニメーション映画もランク入りしている。米アカデミー賞(Academy Awards)長編アニメーション賞を受賞した宮崎駿(Hayao Miyazaki)監督による作品『千と千尋の神隠し(Spirited Away)』が18位に入り、アニメーション映画の中ではトップだった。

「アジア映画100(Asian Cinema 100)」の完全版は、http://biff.krで閲覧できる。上位5作品は、以下の通り。


1.『東京物語(Tokyo Story)』監督:小津二郎、日本

 ストーリーを語る上で、控えめな表現で多くを語るといった手法を一貫して採り続けた小津監督による純粋な感情を描いた作品。東京で暮らす子どもたちを訪ねて地方から上京するも、忙しさのあまり子どもたちから冷たくあしらわれ、さみしい思いをする2人の老夫婦。だが、戦死した次男の妻だけは、2人を温かく迎える…。自己中心的な近代社会への批判が込められた作品だが、われわれ現代人にとっても身につまされるストーリーとなっている。

2.『羅生門(Rashomon)』監督:黒澤明(Akira Kurosawa)、日本

 黒沢監督の代表作ともいえる本作品は、1950年当時に製作された全作品の中でも異彩を放っている。ある一人の男の死をめぐり複雑に絡み合う偽りの描写は、世界の人々を驚愕させた。ストーリーは、ある殺人事件が登場人物らに影を落とすところから始まる。素晴らしいのは、真実が明らかになるまでに黒沢監督によって描かれる独特の世界観だ。名俳優、三船敏郎(Toshiro Mifune)を含む俳優らが演じた登場人物らはそれぞれ、殺人事件が起きた経緯を自身に都合よく解釈する。この作品を見る者は、最後には誰を信じれば良いのかわからなくなる。ベネチア国際映画祭(Venice International Film Festival)コンペティション部門最高賞の金獅子(Golden Lion)賞、アカデミー賞名誉賞を受賞。

3.『花様年華(かようねんか、In the Mood for Love)』監督:ウォン・カーウァイ(王家衛、Wong Kar-wai)、香港

 1960年代の香港が舞台の切ない恋を描いた作品で、劇場上映されたスタイリッシュな作品群の中でも最も突出した作品の一つに数えられる。マギー・チャン(Maggie Cheung)とトニー・レオン(Tony Leung)が、不倫の恋人同士を演じる。2人の関係は抑制された状況の中でくすぶり続けはするが、大きな炎のように燃え上がることはない。「最も親密な瞬間」を幾度となく捉えるクリストファー・ドイル(Christopher Doyle)のカメラワークには、見ている方も顔を赤らめてしまうほどだ。2000年のカンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で最高賞パルム・ドール(Palme d’Or)にノミネートされた。

 4位には、インドを代表するサタジット・レイ(Satyajit Ray)監督によるいわゆる「オプー3部作(The Apu Trilogy)」、5位は台湾の侯孝賢(Hou Hsiao Hsien、ホウ・シャオシェン)監督による『悲情城市(A City of Sadness)』だった。

(c)AFP/Mathew Scott