【9月24日 AFP】ニュージーランドで世界初の「気候変動難民」認定を求めたが棄却された太平洋の島しょ国キリバスの男性が23日、本国に送還された。男性の支援者らが24日、明らかにした。

 男性はイオアネ・テイティオタ(Ioane Teitiota)さん(39)。ニュージーランドでの滞在許可を求め、4年間、あらゆる手を尽くして闘った。

 テイティオタさんは、キリバスでは海面の上昇により国民10万人が水没の危機に見舞われており、自身や家族も危険にさらされていると主張していた。

 テイティオタさんの牧師であるイオセファ・スアマリー(Iosefa Suamalie)師は、在ニュージーランドのキリバス人団体による最後の嘆願も退けられ、テイティオタさんが出国したことを明らかにした。

 スアマリー師によると、テイティオタさんの妻とニュージーランドで生まれた3人の子どもたちも来週、キリバスへ戻る見込みだが、彼らの将来は不確かだという。「私たちがしていることは、気候変動により一種の迫害を受け、ここニュージーランドで難民申請をしている家族を助けることだ」とラジオ・ニュージーランド(Radio New Zealand)に語り、「キリバスに戻っても、生きるすべもなく、希望もない。我々は安全ではない場所に子どもたちを送り返すことになる」と述べた。

 海抜の低いキリバスは、嵐の増加や洪水、水の汚染など、気候変動に関連した様々な環境問題に直面。切迫した状況を受け、キリバス政府は塩水被害でもはや作物が同国で育たない場合に備えて、2000ヘクタールの土地をフィジーに購入した。

 テイティオタさんは2007年にニュージーランドに移住し、査証(ビザ)が期限切れになった後も滞在。2011年に軽微な交通違反で警察に摘発されたのがきっかけとなり、不法滞在が発覚した。

 ニュージーランド最高裁は今年初め、キリバスが気候変動による困難に直面していると認定したが、国際的に認知された国連(UN)の難民条約の下では、帰国した場合に迫害を受ける恐れがあることを難民の条件と定めており、テイティオタさんはこの条件を満たしていないと述べた。

 ジョン・キー(John Key)首相は今週、テイティオタさんの論議は信ぴょう性に欠けるとし、ニュージーランドの法律を順守しなければならないと語った。「私は人々のテイティオタさんへの同情を理解している。(しかし)私から見れば、彼は難民ではなく、不法長期滞在者だ」(c)AFP