【9月8日 AFP】北極圏ノルウェー領スバルバル(Svalbard)諸島スピッツベルゲン(Spitsbergen)島の人々は、自宅に鍵をかけない──ホッキョクグマに襲われた際、近くの家に逃げ込めるよう皆で協力体制を敷いているためだ。

 北極が夏を迎える時期、この島の町ニーオルスン(Ny-Alesund)には、約150人の研究者や技術者が集まるが、それ以外の寒い時期になると、施設管理のために残る数人だけとなる。

 獰猛な動物と隣り合わせとなるここでの生活を始めるにあたっては、まず最初に「やっていいこと」と「いけないこと」を学ぶ。仏独が共同運営するAwipev研究所代表のキャサリン・ラング(Katherin Lang)氏は、ここに来る人全員に「クマを見たら、どの建物でもいいから入って管理担当者を呼ぶ。番号はすべての電話に記されている」と伝えるという。

 研究施設外に出るためは射撃の技術も必要となる。そのため、新たにここで暮らし始める人は射撃の練習をする。

 施設でロジスティクスを担当するノルウェー企業の科学アドバイザー、セバスチャン・バロー(Sebastien Barrault)氏は、最も重要なことは、「常に警戒すること。クマはどこにでもいる可能性があるし、予測できない」としながら、「銃は町を出るためのパスポートだ」と説明する。

 スバルバルの面積は、スイス国土の約1.5倍。ここには約3000頭のホッキョクグマが生息しており、約2500人の人口を上回る。

 現在、地球上に残っているホッキョクグマは2万~2万5000頭とされ、国際自然保護連合(International Union for the Conservation of NatureIUCN)のレッドリストで絶滅危惧種に指定されている。

 成長したオスのホッキョクグマは体重350~600キロで、短い距離なら、時速40キロで走ることもできる。それでも、クマの射殺は、人間の命を守るときだけに許される「最後の手段」と、バロー氏は言う。