■「母さんは僕の腕の中で死んだ」

「母さんと僕は、木切れにつかまって9時間、水中にいた。僕は母さんに、大丈夫だからねと声を掛け続けた。でも、救助隊が到着する15分前に母さんは死んじゃったんだ」

「母さんは僕の両腕の中で死んだ。救助隊員に、母さんの遺体をかえしてほしいと頼んだけど断られた。母さんは死んだ。妹も死んだ」

 その後、ハムザさんは、父親と姉は救助され、病院に搬送されていたことを知った。

 救助された人の一人は、自分と友人2人は、この不運な船に乗り込むために1人2200ディナール(約19万円)支払っていたことを明らかにした。

 密航業者は、リビア内戦が起きた2011年以降、国内の混乱に乗じ、利ザヤの大きなこの商売を拡大してきた。

 しかし、欧州への渡航はリスクが多く、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば今年だけで2500人以上が死亡しているという。この数字には、ハムザさん一家が乗っていた船の沈没事故による死者は含まれていない。(c)AFP/Mohamad Ali Harissi