■安全第一で進める作業

 ダイバーたちは特製のグローブを装着するが、それでも海水の冷たさは手に伝わってしまう。ハルバッハさんは「体の中で、冷たさに一番敏感なのは手だから、いつも困っている」と説明する。シュバニッツさんも「大体いつも30~45分ぐらい潜っているが、最大で90分間は耐えることができる。だがその頃には、手が本当に冷えきってしまう」と述べた。

 ダイバーたちは時に標本の採取だけでなく、撮影装置の調整や、海水温や海中光、透明度などの測定装置の調整といった作業を水中でこなさなければならないが、手の冷えはこうした海中での作業の正確性も妨害しかねない。

 寒さに加え、安全性も大きな問題だ。3人には保険会社から特別な条件が課されている。3人のうち1人が水中に潜る場合、「問題が起きた場合に備えて、他の1人が潜水できる状態で待機し、もう1人がボートを操縦する」とシュバニッツさんは説明する。

 2005年には、事故が起きた場合に必要不可欠な減圧室が設置され、緊急時の備えが以前に比べ、ずいぶんと簡素化されたという。それまでは毎朝、スピッツベルゲン島の主要な町ロングイェールビーン(Longyearbyen)から飛行機がやって来ることが可能かどうか、天候をチェックしなくてはならなかった。緊急事態には、減圧設備があるノルウェー本土まで、約4時間かけてダイバーを移送する必要があったからだ。減圧室が設置されて10年が経過したが、実際に使用されたのは訓練時のみだという。

 円筒状の減圧室の白い外壁を軽くたたきながら、シュバニッツさんは「通常、潜水するのは水深18~20メートルまで。ほとんどの実験はその深さで済ませられる。だから安全なダイビングだ」と話した。(c)AFP/Céline SERRAT