■ミッドウェー海戦での大敗北、大本営発表

「それをまたねえ、戦争というものはどうしてこう嘘ばっかり国民に伝えるのかな、と思ったのですが、その敗戦が、われわれ一般国民には、勝ち戦だといって、大本営から発表して、そして、私たちみたいに漂流してどうしようもない人間を全部拾い集めて、そして、一般の国民に会わせるとばれちゃうから、九州の笠之原(かさんばら)、という一番鹿児島の山奥へつれていって、そこへ約2か月隔離をして、外からも入れない、外にも出さない、そういう生活までさせるのが、戦争という、まあ、最高の罪悪ではないかと」「そういうことが日常の当たり前といってやっていることが戦争の、…嘘をいう、これ以上人をだます、負けた戦争を勝ったといって信用させる、こんなことが、戦争というものの日常茶飯事なんだ」

■空中戦で、相手のパイロットの表情までなぜ見えるのか

「それはね、明々白々なんです。…(中略)…この戦闘機には、この(従来型の小型の)弾も撃てるけれども、こんどは20ミリという大きな弾を翼の外側(がいそく)からね、ここから打てるようになった、これが強みなんですが、強い反面、数が少ない。これを60発しか打てないから、ちょっと撃てばすぐ終わっちゃうんです」「だからこれを有効に使うためには、100メートル以下に接近をして、もう狙わんでも当たるくらいにそばへ行って撃つ。それが相手の苦しむ表情が、だから、本当にひどい人はぶつかっちゃう。よける時に。2メートル、3メートル、5メートルくらいまでそばへ行って相手の顔を見るでしょう?相手の顔がねえ、ゆがんで、うらめしそうな顔をして、しかも火だるまになって落ちてゆくでしょう。それをおんなじ人間として、したということに対する良心的なね、つらさが、ずうっと後まで残る」

「しかし、そのときには、つらさとは逆に、喜びで、あ、俺のほうが強かったという、自分が落ちないでよかったという喜び、俺の操縦の技術は彼よりもうまかった、強かった、その優越感、その2つは頭んなかをぱーっとよぎる。でもその次がいけない」「相手もつらかったんだろう、苦しかったんだろう、家族があったんだろう、おっかさんがあったんだろう、子供もいるんじゃないか、それがずーっと、平和になった今も心の中に残っている。それは、戦争というね、これは罪深い、罪悪の最高だ、と私は考えています」