■臨床的な応用はまだ先

 だが、英ケント大学(University of Kent)のダレン・グリフィン(Darren Griffin)教授(遺伝学)は「臨床試験の必要性を考えると、臨床的な応用が可能になるまでには、しばらく時間がかかる」と思われると指摘している。同教授は、今回の研究に参加していない。

 2010年にも、英国の科学者チームが、ドナー由来のミトコンドリアDNAと、実両親から受け継いだその他のDNAを持つ胚を培養皿上で作製することに成功している。その英国では今年2月、ミトコンドリア異常が受け継がれるのを防ぐ手法を用いて、いわゆる「3人の親」から受精卵を作ることを認める世界初の国となった。

 2年前、ミタリポフ氏と研究チームは、ヒトの皮膚細胞をES細胞に変化させることに世界で初めて成功したとする論文を発表した。その後同氏は、論文に複数の誤りが含まれていたことを認めたが、最終結果自体は影響を受けないと主張した。

 遺伝情報を抜き取った卵子に別人のDNAを移植するミタリポフ氏らのクローン作製技術は、ヒト胚を壊さないで幹細胞を作製できるため、画期的手法と称賛された。(c)AFP