■「決断は間違っていない」

 そんな、びくびくしながらのスタートではあったが、この分野ではライバルがほぼ存在せず、2人の噂は急速に広まることになった。

 親しみのあるポップ・ロック風のオリジナルの楽曲やカバー曲、そしてトークを散りばめた90分のコンサートで、黒羽刑務所の受刑者たちは曲に合わせて手を叩き、慎まし気な様子で歓声を送った。

 コンサートが終わった後、違法薬物を使用した罪で服役中の40歳代の受刑者は、「ぺぺさんのコンサートは、生きている意味や命など、深く考えさせられる」とAFPに語った。そして、聴いていて涙が出そうになったと話し、「出所に向けて一生懸命努力していかなければならないと思いました」と続けた。

 日本における逮捕者数は、過去10年で減少し続けている。人口約1億2700万人のうち受刑者はわずか6万人と、他の先進諸国と比べてはるかに少ない。

 経済協力開発機構(Organisation for Economic Cooperation and DevelopmentOECD)による最新の統計によれば、人口10万人当たりの受刑者の数は、米国の710人、英国の147人、フランスの98人に対して日本は51人となっている。しかし、その一方で再犯率は増加しており、1997年の28%から2013年は47%近くへと跳ね上がったのも現状だ。

 Paix2の2人は、自分たちの活動にメディアが興味を持ってくれることで、刑務所についての凝り固まった一般的なイメージが和らぐことにつながってほしいと述べる。「(受刑者が)毎日どういう生活を送っているのか──そのようなことを知れば理解も変わるのではないか」とManamiさんはコメントした。

 しかし、彼女たちの活動は、決して見入りのいい仕事ではない。週末に開かれる刑務所でのイベントの出演料は、大抵の場合、1公演につき3万~4万円ほどだ。このことについて、Megumiさんは「テレビに出るとか舞台に出るとか、そういうほかの芸能人のような道から外れるわけですよね。刑務所は華やかではないし」と述べる。

 全国各地の刑務所を回る2人にとって、刑務所外でのコンサートを行う機会はそう多くない。それでも、かつての受刑者たちがその数少ないステージに足を運んでくれた時、自分たちの決断が正しかったことに気づいたという。

「Paix2のイベントに社会復帰した人が来たんですよ。来てくれる人って、『本当に自分は再犯を起こさない』と言ってくれる。自分たちにとってやってきた価値があるなと。一番の原動力です」とManamiさんは話してくれた。(c)AFP/Natsuko FUKUE