【5月21日 AFP】太平洋戦争開戦直前にナチス・ドイツ(Nazi)の旧ソ連侵攻を事前に察知したリヒャルト・ゾルゲ(Richard Sorge)──この伝説的なスパイにナチス外相が宛てた書簡が日本で見つかった。都内の書店が発表した。書簡は、ゾルゲの誕生日を祝う内容だった。

 ゾルゲをめぐっては、ナチスが独ソ不可侵条約を破棄してロシア西部に進軍する計画を立てていることを突き止めたことで知られている。在日ドイツ大使館の報道官、記者として太平洋戦争前の東京で情報収集していたゾルゲは、日本とナチスがともにソ連への侵攻を計画していることをモスクワに報告した。

 今回見つかったのは、1938~1945年までナチス・ドイツの外相だったヨアヒム・フォン・リッベントロップ(Joachim von Ribbentrop)が、ゾルゲの43歳の誕生日に送った1938年の書簡で、この中で同外相は在日大使館におけるゾルゲの「突出した貢献」を称賛している。歴史学者らは、ゾルゲがナチスに非常に信頼されていたことを示す──そしてソ連にとって極めて価値のあるスパイだったことを示す書簡だと評価している。

 書簡を発見した東京・神田の神保町にある書店、田村書店(Tamura Shoten)の奥平禎男(Yoshio Okudaira)氏は、ナチスがゾルゲを非常に信頼していたことを端的に示す興味深い資料だと語った。

 奥平氏によると、書簡は、ナチス・ドイツ関連資料を処分したいという人から入手したもので、親族の遺品だったとされる。遺品には、リッベントロップ外相のサイン入り写真も含まれていた。売却者は書簡がどういうものか知らなかったという。

 書簡は競売に掛けられる予定だが、奥平氏は、リッベントロップ外相の秘書が執筆しているため、どちらかといえば通常の外交文書に近いものになることを注意した。

 スパイ活動が発覚し、ゾルゲは当時の日本の当局によって逮捕され、1944年に死刑が執行された。当初、旧ソ連はゾルゲが自国のスパイであることを否定したが、独裁者ヨシフ・スターリン(Joseph Stalin)の死後、一転してこれを認めている。(c)AFP/Hiroshi HIYAMA