【4月28日 AFP】アドルフ・ヒトラー(Adolf Hitler)総統は死亡し、進軍する連合軍に動きを封じられ、ドイツ北西部の海軍基地に孤立した第3帝国最後の指導者は、降伏命令を発信した。70年を経て、この電報が英競売大手ボナムズ(Bonhams)によって米ニューヨーク(New York)で29日、競売にかけられる。

 ピンク色の薄い紙に打たれた電報はヒトラーの死後、大統領に就任したカール・デーニッツ(Karl Doenitz)が、ドイツ空軍を率いていたロベルト・フォン・グライム(Robert von Greim)元帥に宛てたもので、無条件降伏に調印したこと、1945年5月9日をもってすべての戦闘は終結することを伝えている。フォン・グライム元帥は5月8日午後10時40分にこの電報を受け取った。

 第2次世界大戦(World War II)の遺物の中でもとりわけ貴重なこの電報は、2万~3万ドル(約240万~360万円)相当の価値があるとされている。ボナムズのキュレーターで歴史家のトム・ラム(Tom Lamb)氏は、同大戦中のドイツ軍の電報を目にしたのは初めてだと述べている。「独軍は焦土作戦を行っていた。撤退する際にはすべての書類を燃やし、破棄していた。独軍がそうしなかった物でも(後に攻め入った)ロシア軍がそうしたため、残っているのは非常にまれ」だという。

■エノラ・ゲイ副操縦士の日誌など300点

 今回のボナムズのオークションには、第2次世界大戦に関連する品300点以上が出品される。旗や軍服、録音素材、手帳、たばこケースなどの遺品で、英国、フランス、ドイツ、ギリシャ、ロシア、米国、インド、中国、日本などから集められた。

 最も高価とされる出品物は、世界初の原爆を広島に落とした米軍のB-29爆撃機「エノラ・ゲイ(Enola Gay)」の副操縦士だった故ロバート・ルイス(Robert Lewis)氏の2冊の日誌で、推定15万~20万ドル(約1780万~2400万円)とされている。

 ルイス氏ゆかりの品には、1942~47年にかけての飛行日誌や、1945年8月6日のエノラ・ゲイの作戦に向けた計画や写真などが含まれている。同年12月までに14万人が亡くなった原爆を投下した際に、巨大なきのこ雲が立ち上がったのを見たルイス氏は「神よ、我々はなんということをしてしまったのか?」という有名な言葉を残している。(c)AFP/Jennie MATTHEW