【3月20日 AFP】電気自動車は、汗だくなるほど暑い都市部の夏に対抗するための有用な手段になり得るとの研究論文が、19日の英科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に掲載された。

 中国と米国の国際研究チームが発表した論文によると、化石燃料で走る自動車から電気自動車に切り替えることにより、「ヒートアイランド」と呼ばれる都市部での高温化現象を緩和することができるという。

 ヒートアイランド現象は、自動車や空調から出る排気熱や、日中に道路やビルに蓄えられて夜間に放射される太陽熱などにより、都市部の気温が周囲より高くなることで発生する。場合によっては、この熱の蓄積が夏の猛暑と相まって、うだるような暑さによる不快感と熱ストレスがもたらされることもある。

 ヒートアイランド現象では、ある悪循環が生じる──気温が上がるほど、エアコンの設定温度を下げる人が増え、市街に放出される熱量が増加する。そして、これが繰り返される。

 今回の研究では、北京(Beijing)市で、ガソリンおよびディーゼルエンジン搭載の乗用車と小型トラックを電気自動車に切り替えた場合に生じる変化についてのシミュレーションが行われた。

 シミュレーションでは、北京市での2012年夏の天候が参照された。この時の同市の気温は、周辺地域より3度ほど高かった。研究チームが採用したモデルによると、電気自動車への切り替えで、気温の上昇を0.94度減少させることができる計算になるという。

 またこの切り替えでは、1日あたり1440万キロワット時の電力節約にもつながる。これは、二酸化炭素(CO2)排出量では、1万686トン/日の削減に相当する。

 このシミュレーションでは、電気自動車を充電するために同地域の発電所から出る、追加の化石燃料からの熱も考慮されている。電気自動車から放出される熱は、従来型自動車の約5分の1ほどだ。

 研究論文は「電気自動車への切り替えで、都市高温化の度合いを軽減でき、これによって空調で消費される毎日の電力量を削減できる。これは局地的および世界的気候に有益な影響をもたらす」としている。

 一方で研究チームは、ヒートアイランド現象にはさまざまな要因が影響しており、要因の一部はまだ詳細が明らかになっていないと指摘し、注意を促している。粒子状物質による汚染、都市のレイアウト、ビルの設計、エネルギー効率、公園なども、同現象の悪化や緩和の要因と考えられている。

 今回のシミュレーションでは、気温の変化とエネルギーの節約のみに焦点が絞られており、電気自動車と充電インフラの導入コストを考慮する設計にはなっていない。また大気汚染削減による健康上の利益なども評価の対象外としている。(c)AFP