■生死を問わず

 生きている間は、娯楽目的で利用される飼育下のトラ。死んだ後の骨や皮はどうなるのだろうか?この問題をめぐっては、ベールに包まれ見えにくくなっている部分もあるようだ。

 中国では、トラの骨に滋養強壮の効果があると信じられており、伝統薬の成分として長い間珍重されてきた。1993年には、取引が禁止されたが、自然保護活動家たちは、この法律が順守されていないと指摘する。

 活動家らによると、施設で繁殖させた個体については、絶滅の危機にひんした動物と法律上規定されるのか否かがあいまいで、またトラが死んだ際に申告するべき内容についてもほぼ決まりがないに等しい状況だという。

 中国でトラは財力の象徴だ。トラの毛皮でつくったカーペットはぜいたく品として高い人気があり、東北虎林園の売店でも、トラの骨が入っているとされる酒が一本約5000元(約9万5000円)で販売されている。

 昨年12月には、裕福な中国人実業家が、購入した3頭のトラを殺して食べた罪で禁錮13年の刑が言い渡された。

 国内メディアの報道によると、この事件に関与した犯罪グループは、計10頭のトラを殺したとされる。うち数頭は東南アジア諸国から生きたまま密輸されたという。1頭当たり20万~30万元(約380万~570万円)でトラを売買し、1頭あたり10万元(約190万円)以上の利益を得ていたと報じられている。

■「虎骨酒」ではなく「骨強化酒」

 EIAによると中国の野生の個体数は約45頭という。一方、1986年に開園した東北虎林園では、当時わずか8頭だったトラが、現在は1000頭以上飼育されているという。

 同園の代表者らは、飼育下にあるトラを利用した製品を取引することで、需要の矛先が野生のトラに向かうのを緩和し、また将来的には、飼育したトラの一部を野生に戻したいと繰り返し主張している。

 だが、死んだトラの部位を販売したり、製品に利用したりしているかどうかについてAFPが再三コメントを求めたにもかかわらず、同園からの返答は得られなかった。

 園内の売店では、「骨強化酒」との名前の酒が販売されている。販売員は、この製品にトラの骨の成分が入っていないことを訪れた外国人観光客に説明していたが、AFPが電話で問い合わせたところ、ある販売員は「取り締まりを避ける目的で、製品の名前を虎骨酒から骨強化酒に変えた」と説明した。(c)AFP/Neil CONNOR