【8月7日 AFP】かごに入ったヤマアラシ、バケツの中には絶滅危惧種のカメ、布袋にはヘビ――中国の市場では、希少な野生動物が公然と売られている。こうした希少種を食べる行為がこの春、禁錮刑に相当する犯罪に指定されたにもかかわらずだ。

 全国人民代表大会(National Peoples Congress、全人代、国会に相当)の常務委員会は4月、1989年に施行された希少動物の取引を禁じる法律の解釈変更を承認。希少動物を食べたり売ったりした場合、最高で禁錮10年の実刑を科すと定めた。

 だが、南部・広東(Guangdong)省では、取り締まりが強化された様子はほとんどない。広東料理は珍味で知られ、地元の人々は「4足のものはテーブル以外、何でも食べる」と豪語する。

 同省・従化(Conghua)市の卸売市場「幸福市場(Xingfu Market)」でセンザンコウを売る業者は、AFPの取材に「この肉は、500グラム当たり500元(約8300円)で売れるよ」と語った。「生きたやつが欲しければ、1000元(1万6000円)以上はするね」

 幸福市場は2年前、野生動物の密輸ルートで中核を占める存在であることがメディアに暴露された。地元当局者が国営メディアに「公然の秘密」だとして明かしたのだ。匿名で取材に応じたセンザンコウ販売業者も「今は取り締まりが厳しく、センザンコウで生計を立てるのは難しくなってきた」とぼやいた。それでも、朝市ともなればヘビやイノシシを売りさばく業者が活況を呈する。

 市場に並ぶ全ての動物が売買を禁じられているわけではないが、たとえばオオサンショウウオは国際自然保護連合(International Union for the Conservation of NatureIUCN)によって、「野生絶滅」より1段階低い「絶滅危惧IA類」に指定されている。ヤマアラシと並んで売られているナミイシガメも、一部が「絶滅危惧IA類」に分類されている。

■伝統の「野味」

 中国南部には、野生動物を食材にした「野味」と呼ばれる伝統料理が存在する。トラやカメ、ヘビといった一般的には食材とみなされない動物が、健康に良いとして昔から珍重されているのだ。ただ、明確な科学的根拠はない。

 中国も加盟する「ワシントン条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and FloraCITES)」で国際取引が規制されているセンザンコウは、中国では母乳の出を良くすると信じられ、東南アジア全域に広がる巨大な密輸網が存在する。5月には、広東省当局が冷凍センザンコウ956匹、計4トン相当を押収したことが国営メディアに報じられた。

 香港(Hong Kong)を拠点とする動物愛護団体アニマルズ・アジア(Animals Asia)創設者のジル・ロバートソン(Jill Robertson)氏は「中国では、違法な野生動物取引がドル箱ビジネスとなっている」と指摘。厳罰化は評価できるものの「取り締まり強化と、教育を通じた国民の意識改革が欠かせない」と述べている。