【2月11日 AFP】喫煙が原因で起こる脳の外層への損傷は、禁煙後に回復させることが可能かもしれないとの研究論文が、10日の英科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン医学誌「モレキュラー・サイキアトリー(Molecular Psychiatry)」に掲載された。ただし回復には何年も要する場合もあるという。

 論文によると、英北部スコットランド(Scotland)に住む70代の人々500人を対象に実施した脳スキャンで、加齢による大脳皮質薄化と喫煙との間に関連性が確認されたという。

 だが研究チームは同時に、被験者グループ内の元喫煙者の大脳皮質が「禁煙後に毎年、部分的に回復したように思われる」と指摘し、大脳皮質が禁煙後に回復する可能性を初めて示した。一方で「部分的な回復は可能とみられるものの、その過程は長期に渡る可能性がある」と警告している。

 認知機能低下や認知症と喫煙との関連性は多くの研究で示されており、一部の研究では脳の退化との関連も指摘されていた。

 論文の執筆者らは「喫煙者は平均して、喫煙をしない人に比べて、年齢を重ねるにつれて全般的な認知機能の低下がわずかに促進されること、また認知機能の柔軟性や記憶などのいくつかの認知領域に関する評価の平均点が低くなることが証拠で示唆されている」と述べている。

 だがこれまで、この喫煙による影響が回復する可能性があるかどうかは示されてこなかった。

 研究チームは今回の最新研究で、1947年実施のスコットランド知能調査(Scottish Mental Survey)に学童として参加し認知機能の検査を受けた人々に、2007年に再びMRIスキャンを受けてもらい、うち504人の結果を分析した。

 論文によると、被験者全体の平均年齢は73歳。現在も喫煙している人は36人、元喫煙者は223人、一度も喫煙したことのない人は245人だった。各グループの年齢や子ども時代の知能指数(IQ)に有意差はなかった。また、男女比はほぼ半々だった。

 MRIスキャン結果の分析により、現在も喫煙している人の大脳皮質は「一度も喫煙したことのない人に比べ、概して薄い」ことが分かったという。