【2月10日 AFP】食料調達を始めようとする若いミツバチには失敗して早死にするケースが多くみられ、これがコロニー崩壊の憂慮すべき現象を引き起こす要因の一つとなっているとした研究論文が、9日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された。

 科学者らは、農作物の重要な受粉媒介者であるミツバチの個体数が世界中で減少している理由を解明するため、殺虫剤の使用から、ハチが好む植物の消失、病気までに及ぶさまざまな要因の研究を進めている。

 英国、米国、オーストラリアの国際研究チームが行った最新の研究では、蜂群崩壊症候群(CCD)のもう一つの新たな要因として「巣の中の社会的崩壊」が指摘された。

 研究チームは、ミツバチ数千匹に無線発信器を取り付け、ハチの行動を調査した。

 ミツバチは通常、生後2~3週間で蜜の採集を始める。しかし、コロニーが病気や食料不足、その他の慢性ストレス要因に見舞われると、高齢のハチから先に死んでいくため、これを補うかたちで若いハチが蜜採集を始める。ただ、若いハチが蜜採集の飛行を完了させる可能性は低く、初回の採集飛行中に死ぬ確率が極めて高いことを研究チームは発見した。

「この若いハチの集団が蜜採集に向かうことで、食料調達の成果が不振になる上、食料調達係の死を早める事態を招いた。結果、コロニーの個体数減少を劇的に加速させることにもつながった。これは世界中でみられるCCD現象の観察結果に酷似している」と論文は述べている。

 英ロンドン大学クイーンメアリー校化学・生物科学科(School of Biological and Chemical Sciences at Queen Mary University of London)のクリント・ペリー(Clint Perry)氏は、「巣を早期に離れる若いハチの行動は、高齢の蜜採集バチの個体数減少に対する適応行動である可能性が高い」と指摘する。

「だが、若いハチの致死率が上昇する期間が長く続いたり、短期間での個体数減少に耐え得るほど群れの規模が大きくなかったりした場合、この自然な適応反応は、コロニーの社会的均衡を乱し、破滅的な結果を招く恐れがある」(ペリー氏)

 コロニー崩壊を回避する方法については、研究チームはまだ解明に至っていないが、食料採集行動が始まる月齢を追跡調査することで、巣の健全性全般に関する理解を深めることができるかもしれないとペリー氏は話している。(c)AFP