【4月29日 AFP】世界各地でハチの大量死が起こっていることについて国際獣疫事務局(World Organisation for Animal HealthOIE)は28日、複合的な原因によるものだという見解を発表した。

 世界的なハチの大量死は、ハチを媒介とする授粉に頼っている作物栽培に大きな脅威を与えているが、OIEではその原因について、寄生生物からウイルスやバクテリアの感染、殺虫剤、人為的な環境破壊による栄養失調など複数の要素が絡み合っていると分析した。

 通常、ハチの巣における自然死は群れ全体の5%程度だが、「ハチ群崩壊症候群(colony collapse disorderCCD)」と呼ばれる大量死が起きると群れの3分の1から、ひどい場合には90%ものハチが死ぬ。

 米政府が3月に発表した2009年のハチの巣の減少率は29%だった。07年の32%、08年の36%よりやわらいではいるが、日本や欧州でも同様の減少傾向にある。

■殺虫剤、病気、外来種、花の減少による栄養不足・・・

 ベルナール・バラ(Bernard Vallat)OIE事務局長は「ハチは世界の食糧安全保障を支えている。数が激減すれば生物学的な大災害となるのは間違いない」と警告する。

 推計によると、食卓に上る食べ物のうち3分の1の栽培過程にセイヨウミツバチが関わっている。激減による脅威の規模は数百億ドル相当だ。

 OIEの専門家チームは国際的に行った調査の報告書で「無責任な」殺虫剤の使用によって、さまざまな病気に対するハチの免疫が弱まっていることも原因だろうと結論している。また特に外来種に対する不適切な防御措置や気候変動も一因だとみなしている。

 以前の調査では、バロアと呼ばれるという吸血性のダニや、Nosema cerenaeといわれる単細胞の真菌など、世界各地で異なる種類の寄生生物がハチたちをむしばんでいることも明らかになっている。

 欧州では最近、アジアから侵入したツマアカスズメバチがミツバチの巣に近づき、飛んでいるミツバチを捕食するという現象も増えている。

 もうひとつ、生垣や野生の草花がない大規模農場や市街地の拡大によりハチが栄養不足になっている疑いもある。

 バラ事務局長はさらなる調査研究が必要だと訴えると同時に、国家間でハチを輸出入する際には、国境を越えて汚染が広がらないよう、OIEが示したバイオセキュリティーのガイドラインに従うよう呼び掛けた。(c)AFP