【1月30日 AFP】依存からの脱出に効果的なのは、医師でもセラピーでも薬でもない──禁煙とダイエットの秘けつは、商品券とネット上の仲間だとする2つの珍しい実験の結果が26日、専門誌に掲載された。

 これらの論文は、世界中で多くの患者を生み出し、医療費の負担を増大させている不健康な生活習慣の改善を目指し、斬新でしかも費用対効果に優れた方法を模索している。

■商品券で禁煙成功率アップ

 禁煙に関する実験を行ったのは、英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical JournalBMJ)に論文を発表したスコットランドのチーム。妊娠中の女性を対象に、禁煙に成功すれば商品券を贈ると約束した方が、何の見返りも与えなかった場合よりも、はるかに高い禁煙成功率を収めた。

 スコットランド(Scotland)のグラスゴー(Glasgow)で行われた実験では、妊娠中の女性612人を対象に、ニコチン代替療法などの専門的な禁煙支援を提供し、さらに被験者の半数には400ポンド(約7万円)分の商品券を渡すことを約束した。

 商品券の渡し方は、まず禁煙の期限の打ち合わせのために専門家と面談した際に50ポンド(約9000円)分を渡し、次に4週間禁煙した場合に50ポンド分、次の12週間で100ポンド(1万8000円)分、34~38週間で200ポンド(約3万6000円)分をそれぞれ手渡した。加えて唾液と尿の検査によって禁煙を確認した。

 この結果、何の見返りもなかったグループ306人のうち、禁煙できたのは被験者の9%に当たる26人だったのに対し、商品券を渡すことを約束したグループで成功した被験者は「かなり多く」23%に当たる69人だった。

 さらに12か月後までを追跡したところ、商品券を与えられたグループでは15%が禁煙を継続していたのに比べ、経済的な動機が与えられなかった被験者で禁煙を続けていたのはわずか4%だった。

 論文の共同執筆者であるグラスゴー大学(University of Glasgow)のデービッド・タッピン(David Tappin)氏はAFPの取材に対し、実験の参加者の多くが低所得層に属してはいたが、経済的な動機は「あらゆる階層で効果があるようだ」と話している。

 研究チームは、実験を拡大するには多額の費用がかかるが、英国では妊娠期間中の喫煙が原因とみられる流産が年間約5000件発生しているとし、究極的には妊娠した女性の喫煙が原因で胎児や子どもたちが死亡したり病気を患ったりして増加するコストよりもはるかに安いと主張している。