北京語言大学(Beijing Language and Culture University)の羅衛東(Luo Weidong)教授は「漢字は見ただけでは発音が分からないので、ピンインは教えるときに便利だ。中国の識字率向上運動にピンインは大きな貢献を果たした」と称賛する。ピンインは近年では、コンピューター上での漢字作成を容易にする鍵となった。

■最高齢の反体制派

 だが周氏も、1966年から10年間続いた毛沢東の文化大革命の混乱を免れることはできなかった。知識人たちが迫害を受けたこの時代、60代になっていた周氏も家族と引き離され、寧夏回族自治区(Ningxia Hui Autonomous Region)の収容所で2年間、強制労働を強いられた。周氏は「それまで地べたの上で寝たことはなかった。困難に出会ったときには、楽観的であらねばならない。悲観的になれば死が近づく」と書いている。

 また周氏は1960~80年の20年間を「無駄な時代」と表現し「正直なところ、毛沢東について褒めるべき点はまったく見つからない」と明言する。

 一方、中国を世界第二の経済大国へ押し上げた市場経済を図した毛沢東の後継者、鄧小平(Deng Xiaoping)については、周氏は比較的高く評価しているが、85歳で引退を表明してからは、鄧氏の改革は政変抜きにして十分達成されることはないと批評する本を多数、執筆している。「中国人が裕福になることは重要でない。人間の進歩とは、究極的に民主主義へ向かう進歩だ」と周氏はいう。

 体が衰えるにつれ、多くの時間を睡眠が占めるようになっている。それでも周氏は、今も孔子とソクラテスを愛する猛烈な読書家だ。そして、おそらく中国で最高齢の反体制派知識人だろう。

 現在の習近平(Xi Jinping)国家主席体制の下では、中国共産党を批判する者はたとえ高齢でも弾圧の対象になっている。71歳のジャーナリスト、高瑜(Gao Yu) 氏や81歳の作家、鉄流(Tie Liu)氏を含め、大勢の記者や弁護士、学者らが当局に拘束されている。

 昨今の当局による監視強化で、数年前まで扱うことができた話題がタブーとされ、周氏の著書も標的になっている。検閲当局は2月に刊行予定の周氏の著書について、毛沢東が1950年代に導入した大躍進政策の結果起きた数千万人の餓死や、反知性主義に言及した箇所を削除するよう要求した。(c)AFP/Tom HANCOCK