【1月16日 AFP】「表現の自由」――仏パリ(Paris)の風刺週刊紙シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)本社襲撃事件を受けて注目を浴びているこの理念は、民主主義社会の指標であり、フランス法に根づいている。一方で、フランス法は「表現の自由」に制限を設けており、名誉毀損や侮辱、憎悪・暴力の扇動、テロリズムの擁護については違法と定めている。

■制限

「世界人権宣言(Declaration of Human Rights)」と「欧州人権条約(European Convention on Human Rights)」によって確立された「表現の自由」は、フランスにおいては主に「出版の自由に関する1881年7月29日法(1881年出版自由法)」にのっとって運用される。

 出版自由法では名誉毀損や侮辱を禁じており、これには人種・宗教・性的指向などに基づく誹謗中傷が含まれる。

 同法はまた、出自や特定の民族・国・人種・宗教への帰属・非帰属を理由とする差別・憎悪・暴力の扇動を、処罰の対象と定めている。

■テロリズムの擁護

 シャルリー・エブド本社が7日に襲撃を受けた後、フランスでは複数の事件で「テロリズムの擁護」が訴追の焦点となっている。

 交流サイトのフェイスブック(Facebook)に、シャルリー・エブド襲撃犯と連携してユダヤ系食料品店襲撃・人質事件を起こしたアメディ・クリバリ(Amedy Coulibaly)容疑者への共感を示唆するコメントを投稿したとして14日に逮捕されたフランスのコメディアン、デュードネ(Dieudonne)氏にかけられた容疑も、「テロリズムの擁護」だった。

 フランス政府は2014年11月にテロ対策強化法を制定。「テロリズムの擁護」は、この新法の下で刑事罰の対象となっている。

 法的には、テロリズムに対する好意的な意見を表明することが「テロリズムの擁護」と定義される。有罪なら5年以下の禁錮刑と7万5000ユーロ(約1000万円)の罰金が科せられ、インターネットで発信した場合には禁錮7年以下と罰金10万ユーロ(約1400万円)と刑が重くなる。