ある時点で、クリバリ容疑者はソフィーさんに対し、地下階に逃げ込んだ客らを連れてくるように指示した。地下階ではこの時既に、店の従業員でイスラム教徒のラサナ・バティリー(Lassana Bathily)さんが恐怖におののく客らの一部を冷蔵室に隠していた。

 地下に身を潜めていた客の中には、3歳の男の子とその父親もいた。ソフィーさんはこの親子に、危険な状況が続く1階へと戻るのは「恐ろしい」ことだと伝えたという。

「わたしたちは他の冷蔵室を開けることはできなかった。彼らは静かだった。私は『いいわ、地下にはもう誰もいないと言うから』と言った」

 ソフィーさんはこの後、さらに勇敢な行動をとった。消火器を持ってクリバリ容疑者を襲おうとした3歳児の父親を説得し、思いとどまらせたのだ。

「男の子の父親が、消火器を持って階段を上がってきて、『ピンは抜いた。これをあいつに噴きかけるつもりだ』と言った。私は『そんなことしてはだめ。あいつは私の目の前で人を殺した。絶対にだめ!』と伝えた」

 すると突然、ほとんど何の予兆もなく警察が店内に突入し、クリバリ容疑者を射殺して事件は終わりを迎えた。

「突然、大混乱が起きた。私たちは皆、急いでどこかに身を隠そうとした。少しずつ、金属のシャッターが上がっていって、私は『あっちに行かなくちゃ。逃げ出さなくちゃ』と思った」

(c)AFP