【1月10日 AFP】パリ(Paris)郊外と市内の2か所で9日、同時に発生した人質事件はフランス全土を震撼させたが、一方の現場となった食料品店では男性が幼い子どもを連れて冷蔵室に駆け込み、もう一つの現場となった工場では流し台の下に隠れた男性が中の様子などの情報を警察に携帯メールで送信して生き延びた。当局は生存者たちのとっさの判断をたたえた。

 パリ北東部の印刷工場では、仏風刺週刊紙シャルリー・エブド(Charlie Hebdo)本社襲撃を実行した人物たちと同一とみられる兄弟が、人質をとって立てこもった。

 このとき、工場の男性従業員が1人、上の階の「社員食堂の流し台の下」に隠れた。捜査筋によると、この従業員はグラフィック・デザイナーの「リリアン」さん(26)。容疑者たちに見つからずにすんだリリアンさんは恐怖を吹き払い、外にいる警察と携帯メールでやりとりを開始。「自分が建物内のどこにいるかなど、作戦支援につながる情報」を送ってきた。

 リリアンさんからは容疑者たちの会話も聞こえたため、外の警官隊にさらなる情報を送ることができたという。また別の情報筋によると、リリアンさんは家族とも携帯メールでやりとりしていた。 

■恐怖の冷蔵室で5時間

 印刷工場から約40キロ離れたポルトドバンセンヌ(Porte de Vincennes)では午後1時になる直前、一組の親子がユダヤ系の食料品店にいると、工場で人質をとった兄弟の一味とみられるアメディ・クリバリ(Amedy Coulibaly)容疑者が店に押し入り、カラシニコフ銃を取り出した。

 3歳の息子を連れていた30代の父親イランさんは、とっさに店の冷蔵室に身を隠した。イランさん親子の他に3人が一緒に隠れたという。イランさんは息子を冷蔵室の寒さから守るため、自分の上着を脱ぎ、それでわが子をくるんだ。5人は冷蔵室内に5時間近く隠れていたという。

 一方、イランさんの母親は、息子と孫が隠れていることをすぐに察し、容疑者に見つからないよう、携帯メールなどで連絡を取らないようにした。代わりに母親は警察にイランさんの携帯電話の番号を教え、それによって隠れている5人の位置を追跡・特定することができた。この情報は最後に警察が店に突入し、クリバリ容疑者を殺害した際に、隠れていた5人が助かった要因となったという。(c)AFP