【1月5日 AFP】1964年にノーベル文学賞に選ばれたが、これを辞退した仏哲学者ジャンポール・サルトル(Jean-Paul Sartre)──サルトルは当時、あらかじめ辞退の旨をつづった書簡を送っていたが、その到着の遅れが、混乱を招く原因となっていたことが明らかになった。スウェーデンの日刊紙スベンスカ・ダグブラデット(Svenska Dagbladet)が3日、報じた。

 同紙によると、サルトルの書簡は、ノーベル委員会(Nobel Committee)によって最有力候補に挙げられてから1か月近く経過した後に到着したという。通常50年とされる秘密保持期間の満了に伴い開示された資料によって初めて判明した。

 サルトルは、世界で最も権威ある文学賞を自ら辞退した唯一の人物で、1945年の仏最高勲章レジオン・ドヌール(Legion d'Honneur)も辞退している。後の説明では、「公的な賞はどれも辞退してきた」と述べ、その理由として独立性の制限などを挙げている。

 ノーベル賞をめぐっては、辞退を要請するサルトルの書簡が間に合わなかったのではないかとの憶測はあったが、今回の資料開示でその臆測が初めて裏付けられた。

 同紙によると、候補者として数年間名前が挙がり続けていたサルトルは、1964年10月14日にノーベル財団(Nobel Foundation)宛に書簡を送り、「今年も今後も」同賞を受け取ることはできないだろうと伝えているという。(c)AFP/Peter Harmsen