【12月26日 AFP】最近の複数のサイバー攻撃に関与したとして非難を浴びている北朝鮮だが、孤立して貧困にあえぎ、インターネット接続が制限されている北朝鮮が、いかにしてサイバー破壊行為を実行できたのかという疑問も浮上している。そして多くの専門家は、中国がこれに一役買っているとの見方を示している。

 米政府は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)第1書記を風刺したコメディー映画『ザ・インタビュー(The Interview)』をめぐり、北朝鮮が製作元の米ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(Sony Pictures Entertainment)にサイバー攻撃を仕掛けたと非難した。この問題の焦点は(特に北朝鮮のインターネットが一時的にダウンして以降)米国対北朝鮮のいわゆる「サイバー戦争」に集まっている。だが一方で専門家の多くは、北朝鮮が攻撃を実行するには中国の関与が不可欠だと考えている。

 香港中文大学(Chinese University of Hong Kong)の政治学専門家、ウィリー・ラム(Willy Lam)氏はAFPの取材に「北朝鮮のサイバー能力は、ハードウエアとソフトウエアの両面で中国の支援に依存している」と語る。「その支援を通じて中国はある程度の管理を実現している。中国はこの立場の維持を望んでいるので、ハッキング問題を理由に支援を止めることはないだろう」

 東京に本拠を置く情報セキュリティーサービス会社ラック(LAC)の飯村正彦(Masahiko Iimura)氏によると、北朝鮮で登録されているIPアドレスはわずか1000個余り。これに対し米国のIPアドレスは15億個、日本は2億個だ。

 だが、北朝鮮の保有するハッカーは推定6000人で、「サイバー戦争」の実行能力は世界トップ5に入るレベルだと、高麗大学(Korea University)のサイバー専門家、李中英(イ・ジョンイン、Lim Jong-In)氏は言う。ハッカーの多くは、北朝鮮当局の委託を受けたソフトウエア企業に雇用され、遼寧(Liaoning)省丹東(Dandong)など中国の国境沿いの都市で活動しているという。

 北朝鮮は基幹ネットワーク回線を4本しか持っておらず、全て中国を経由し、中国連合通信(チャイナ・ユニコム、China Unicom)によって運営されている。

 韓国当局は、最近起きた韓国の原子力発電所へのサイバー攻撃にも北朝鮮が関与したとみている。捜査当局者によると、攻撃に使用したとみられるIPアドレスは、北朝鮮との国境に近い中国遼寧省・瀋陽(Shenyang)に割り当てられたものだった。(c)AFP/Benjamin HAAS