■冷戦の再来、そして2015年へ

 2014年のプーチン大統領の行動は、過去への郷愁を抱えた人たちにとって、恵みとなった。

 世界各地で小規模の緊急事態が起きた四半世紀を超え、冷戦時代の超大国間の対立構造が戻ってきたのだ。

 各国の情報機関はロシア支局の再開設を我先にと急いだ。バルト海(Baltic Sea)の上空では戦闘機が何機も行き交った。NATOは突如として、長らくの存在理由の危機から脱却した。

 今、問いは「これら全てがどこまで行けるか」だ。

 すでにプーチン大統領は絶頂期に達したようにみえる。経済は今もなお、崩壊しかねない状態だ。外交的な孤立──先月のオーストラリアでの20か国・地域(G20)首脳会議で受けた冷遇でそれはあらわになり、プーチン氏は予定を切り上げてロシアに戻った──は、プーチン氏の予想よりもはるかに深かった。

「プーチン大統領は優れた戦術家ではあるが戦略家ではない」と、リップマン氏は指摘する。国内での無制限の支配力と国外に対する主権主張のためなら、プーチン大統領はロシアの経済と発展を犠牲にすることをいとわないだろう。

 その賭けが、プーチン大統領の権力をさらに強化させるか破滅を招くかは、100万ルーブルの質問だ──いや、ルーブルが今年価値を半減させたことを考えると、200万ルーブルの価値がある質問だろう。

 嵐のような1年が過ぎ、プーチン大統領は多くの課題を抱えて2015年を迎える。だがプーチン氏はまだ、いくつかの切り札を用意しているはずだ。

 ロシアは今もなお、イランとの核交渉やシリアの内戦問題において必要不可欠な関係国だ。またトルコや中国、インドと大型のエネルギー交渉を進めるプーチン大統領の動きは、ロシアを世界貿易の中心にとどめることだろう。

 さらにプーチン大統領は揺るぎない自分への自信があると、カラチェフ氏は語る。「欧米の指導者の神経が自分ほど図太くないことに、プーチン大統領は賭けている」という。(c)AFP/Karim TALBI and Olga ROTENBERG