【12月5日 AFP】イスラエル南部で大規模な石油パイプライン漏出事故が発生し、漏れ出た原油がアラバ砂漠(Arava Desert)へと流れ込んでおり、自然保護区が脅威にさらされている。当局が4日に発表した。

 事故が起きたのは、紅海(Red Sea)沿岸のリゾート地エイラート(Eilat)の北方、ヨルダン国境からわずか500メートルの地点だ。同国環境省の広報担当者によると、原油の流出は「全長2~3キロ」にわたっているという。

 イスラエルの国有企業、エンバイロンメンタル・サービシズ・カンパニー(Environmental Services Company)のギラド・ゴラブ(Gilad Golub)氏は、AFPの取材で、これまでにタンクローリー40台分に相当する原油1000立方メートルが流出したと語った。

 同氏は、漏出は自然保護区域内で発生したと指摘し、環境への被害が深刻になる恐れがあると述べた。また流出した原油をすべて除去するのに数週間、地下に染み込みを確認するのに数か月を要する可能性があると話した。

 漏出事故の原因については、「人為的な破壊行為の疑いはない」とし、パイプラインの一部に車両が衝突したことが原因と考えられるとしている。

 ヨルダンの市民防衛当局によると、現地では原油臭が原因で多くの人が治療を求めて病院を訪れているという。ただ気化した原油に毒性はなく、各病院が診察した症状の大半は「異様な臭いが引き起こした不安感やパニック発作」の結果生じたものだと声明で述べた。

 今回の漏出事故は、同国南部の地中海沿岸にある港湾都市アシュケロン(Ashkelon)からエイラートまで原油を運ぶ全長245キロのパイプラインで発生した。

 イスラエルの原油輸送企業、エイラート・アシュケロン・パイプライン・カンパニー(Eilat Ashkelon Pipeline CompanyEAPC)の広報担当者によると、漏出は現地時間3日午後8時45分(日本時間4日午前3時45分)、同パイプラインの新設された区分で発生した。ただ漏出はすでに停止しており、「現地では現在、大勢の人々が事後処理を行っている」としている。(c)AFP