【11月22日 AFP】イスラム教スンニ派(Sunni)の過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」の戦闘員とシリアで結婚したカトリックの家庭出身のオランダ人女性(19)が、母親に救出されて帰国した後、テロ活動の容疑で逮捕され、21日にオランダ南部マーストリヒト(Maastricht)の裁判所に出廷した。

 裁判所は女性が「国家の安全保障を脅かす罪」を犯した可能性があると認め、女性に出されていた勾留命令は合法的だったと判断し、女性の勾留は続くことになった。裁判所は今月25日に再び審理を行い、さらに14日間の勾留を認めるかを判断する。容疑者は正式に起訴される可能性がある。

 検事は、女性の行動は明らかになっていない点が多く、起訴されるのか、起訴されるとすればどのような罪が問われるのか現時点では不明だが、仮にイスラム国の側について戦闘に参加していたと認定されれば、30年以下の禁錮刑が科される可能性があるとしている。

 イスラム教に改宗し、ステルリナ(Sterlina)からアイーシャ(Aicha)というアラブ風の名前に改名した容疑者は、IS戦闘員と結婚するため今年2月にシリアに行った。オランダでは訴追の初期段階では容疑者の姓は明らかにされないのが通例で、アイーシャ容疑者の姓も明らかにされていない。

 母親のモニク(Monique)さんは先にオランダのテレビのインタビューで、娘は外出したり、ピアノを弾いたり音楽を聴いたりするのが好きだったが、最初は聖書を、次にイスラム教の聖典コーランを持ち帰るようになり、イスラム教に改宗して、イスラム教徒の女性がかぶるニカブを身に付けるようになったと語っていた。

 転機となったのは、アイーシャ容疑者がトルコ系オランダ人のジハーディスト(聖戦士、イスラム過激派戦闘員のこと)のオマル・イルマズ(Omar Yilmaz)戦闘員のインタビューをテレビで見たことだ。イルマズ戦闘員はトルコでも軍務に就いた経験がある元オランダ軍兵士で、現在はシリアでイスラム国の戦闘員の訓練を行っている。

 モニクさんによるとアイーシャ容疑者は「お母さん、あの人を見て。彼がやっているのはとても良いことよ」と話したという。モニクさんは、娘は彼をロビン・フッド(Robin Hood)のような人物だと思ったのだと語った。

 オランダの日刊紙アルヘメン・ダフブラット(Algemeen Dagblad)は、アイーシャ容疑者はシリアに入ってイルマズ戦闘員と結婚したが結婚はうまくいかず、チュニジア人戦闘員と一緒になったと伝えた。その後アイーシャ容疑者は母親のモニクさんに助けを求めた。

 同紙は、モニクさんはイスラム国が掌握するシリアのラッカ(Raqa)に入ったと伝えたが、オランダ検察庁はトルコとシリアの国境で母と娘は会ったとしている。

 オランダの情報機関によると、約130人のオランダ人戦闘員がシリア入りし、30人は帰国したが、14人が戦闘で死亡している。欧州各国は帰国したイスラム過激派戦闘員に警戒を強める一方、イラクやシリアに行ったものの戦闘には参加していない女性への対応に苦慮している。(c)AFP/Celine JANKOWIAK