【10月28日 AFP】北京(Beijing)市当局は今年、大気汚染対策の一環として高井火力発電所(Gaojing Thermal Power Plant)の閉鎖を発表した──稼働50年の同発電所は、当局が閉鎖を約束した市内4か所の大規模石炭火力発電所の一つだが、専門家らは当局のこうした計画で市内の大気汚染が緩和されるとは考えていないようだ。

 発表から約1か月、発電所からは依然として煙が立ち上っていた。失業する可能性があるにもかかわらず、作業員らは落ち着いた様子で「別の発電所で働く予定だ」と語り、北京と隣接している河北省に新設の石炭火力発電所があると説明した。

 北京市内では最近、大気汚染物質「PM2.5(微小粒子状物質)」の大気中濃度が世界保健機関(World Health OrganizationWHO)の指針の16倍に上昇。有害なスモッグの影響で、19日に行われた毎年恒例のマラソン大会では、数百人がマスクをして出走することを余儀なくされた。また来月には、アジア太平洋経済協力会議(Asia-Pacific Economic Co-operationAPEC)首脳会議が開かれ、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領やウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)ロシア大統領などが出席する予定だ。中国当局は会議開催期間中の工場の操業停止と政府機関の休日を既に決定している。

 北京に供給されている電力の約25%は石炭火力発電でまかなわれている。同市当局は、環境への影響が少ない代替エネルギー源への転換を長期的な目標として掲げている。高井の石炭火力発電所に近くでは今年、ガス火力発電所「西北熱電中心(Beijing Northwest Thermoelectric Centre)」が稼働を始めたばかり。

 ただ、国際環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)によると、中国国内ではこうした動きと並行して、石炭火力発電所が毎週1か所の割合で新設される見込みとしている。現在建設中の施設は159に上り、また337施設が計画段階にある。

 昨年北京市内で大気汚染が最も深刻化した際には、PM2.5の濃度が最大許容限度の約40倍まで上昇し、住民2100万人の間に反発が広がった。これに対応して同市当局は、2016年度をめどに石炭消費量を920万トン削減する計画を発表した。