■経済がコモディティ化するから、愛情のある消費に向かう

 ジェーン・ウーは、中国のロハスなライフスタイル雑誌『LOHAS』元編集長で、中国におけるライフスタイル・ビジネスの先駆者とも言える存在。しかし、彼女自身も当初はLVMHの化粧品部門のPRや高級ブランドに勤務し、ラグジュアリーな生活を送る一人だったという。仕事に深くコミットするうちに、外資ブランドの中国チームにはクリエイティヴな制限があることに嫌気がさし、リタイアを決意。Modern Mediaという中国の大手雑誌出版社に転職し、婦人週刊誌の『U+Weekly』の編集に携わる。後に既に創刊されていた『LOHAS』の編集長を務めることになった経緯を、ジェーンは次のように語る。

 「『U+Weekly』は多くのファッション・ブランドやコスメ・ブランドがクライアントでついていて、優良広告クライアントの数でいえば創刊されたばかりの『LOHAS』は圧倒的に負けていたの。そこでやむなく休刊する話が耳に入ってきたから、すぐさま私は上司のもとに駆けつけて“この雑誌は今すぐに売れるものではないけれど、これからのライフスタイルをつくっていく雑誌だから休刊は避けたい。私が編集長になって休刊を阻止したい”と伝えたところ、上司は渋々了解してくれたわ。将来的に『LOHAS』の読者が増えることは確信していたし、紙の雑誌のみならず、読者に対する何かしらのサービスをつくりたいと考えていたの。健康的で、幸福で心地よいライフスタイルを提案したいと心の底から思っていたわ

 しかしその後、ジェーンは上司と雑誌の方向性について噛み合なくなり、やむなく雑誌を去ることになる。雑誌作りを通じて新たなライフスタイルに興味を持ったジェーンは、ロハスの概念に基づいた商品を扱うイーコマース事業「Lohasus」を始める。ホームページ(http://www.lohasus.com/)を拝見すると、一般的な日本の通販会社より遥かにセレクトやデザインのセンスが良いことが一目瞭然だ。

 「顧客層は20代後半から40代の女性で、生活の質の向上に興味がある方が多いと思うわ。他の国では市場規模が小さいロハス・ビジネスだけれど、たとえ人口全体の数パーセントしかターゲットがいなくても、中国は母数が13億人以上だから、必ずと言っていいほどビジネスは成立するのよ。商品は、国内外からセレクトしたものもあれば、自分たちでブランドを作って自社製作したものある。セレクトしているものに関しては、すべて私が生産者に会いに行くことにしているの。彼らの目を見て、誠実な働き方に触れ、そのまま私がお客さんに伝えれば、それ自体が安全な生産の証明になると思っているわ。私はロハス・ビジネスのフィールドに6年間いるけれど、ロハスなライフスタイルは、確実に広まっていっている実感しているわ

 ジェーン自身がこのような価値観を持つ動機は、ニューヨークや東京で同じようなビジネスを始めた人たちと共通するものがある。

「かつてラグジュアリー・ブランドに務めていたから、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)などの高級ブランドを持っているのが当たり前の生活だった。でも、徐々にブランドがどれだけ有名か、経済的地位を象徴するかよりも、作り手やクリエイターの思想が伝わってくるものに興味を持つようになったの。これだけ経済がコモディティ化してきたら、人々はより個人的に好きなもの、心が動かされるものを選ぶようになると思う。ぬくもりを感じられない大量生産のものより、職人が愛情込めてつくったものをそばに置きたいと思うのが自然でしょう。大きな高級ブランドが幅をきかす時代は終焉を迎え、個人個人の好みにフィットする小さいブランドがたくさん生まれる時代になると確信している。もっと心に響く消費に、私たち消費者自身が原点回帰するんじゃないかしら」