【7月30日 AFP】米国と欧州連合(EU)は29日、ウクライナ情勢をめぐり、同国の金融や防衛、エネルギー部門を対象とした厳しい対ロシア経済制裁の実施を決定した。

 米政府は、ロシアの外国貿易銀行(VTB)とその傘下にあるモスクワ銀行(Bank of Moscow)、ロシア農業銀行(Russian Agricultural Bank)の3行や、輸出向けを含む攻撃型潜水艦や水面航行の軍艦を建造する統一造船会社(United Shipbuilding Corporation)を制裁対象に追加。

 追加制裁を発表したバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は、ロシア軍がウクライナ政府軍部隊に向け砲撃を行った証拠があると指摘した上で、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)露大統領に方針の転換を要請。既にゼロ成長へと傾いているロシア経済は追加制裁によってさらに打撃を受けるだろうと警告した。

 さらに、マレーシア航空(Malaysia Airlines)機がロシアの武器支援を受ける武装勢力によってウクライナ上空で撃墜される事件が今月起きたことを受け、米国とその同盟諸国は一致団結して行動する決意をさらに強めたと述べた。

 一方、EUの追加制裁で特に顕著なのは、ロシア国営銀行による欧州金融市場へのアクセス制限。これによって資金調達費用がかさむ可能性があり、低迷するロシア経済にとってさらなる障害となる。

 欧州理事会(European Council)のヘルマン・ファンロンパイ(Herman Van Rompuy)常任議長(EU大統領)は、これらの措置が「強い警告」であるという見方を示すとともに、ロシアによるクリミア(Crimea)半島の「違法な編入」と、ウクライナの意図的な不安定化を非難した。

 一方で、「解決策を模索していく上でロシアがこれまでの方針を転換し、明瞭な形で積極的に貢献を始めるなら、EUには決定を取り下げロシアとの連携を再開する用意がこれまで通りある」ともしている。

 EUの対露制裁は、昨年11月にウクライナ危機が発生して以降も、危機に関与している、あるいは危機から恩恵を受けている人物に対する資産凍結と渡航禁止を指す「第2段階(Phase 2)」のみに限定されていた。だが米国とウクライナの両政府は、このような措置だけでは不十分と主張し、EU域内で消費されるガスの3分の1を供給するロシアとの強い経済的結びつきを損なうことに対し、EU諸国が抵抗を感じていると示唆していた。(c)AFP/Bryan McManus, with Dario THUBURN in Donetsk