デ・ヨングは、決勝トーナメント1回戦のメキシコ戦でそけい部の筋肉を断裂してから、わずか10日で驚異の復帰を果たすと、この試合ではメッシに影のように付きまとう役割を与えられた。

 デ・ヨングは1時間にわたって、イタリアのクラウディオ・ジェンティーレ(Claudio Gentile)の悪名高いプレーを思い起こさせるマークを敢行した。1982年のW杯スペイン大会で、ジェンティーレは若き天才マラドーナに執拗(しつよう)に付きまとい、前回優勝国のアルゼンチンを2次リーグ敗退に追い込んでいる。

 また、ロン・フラール(Ron Vlaar)を中心に、素晴らしく鍛え上げられたオランダの守備陣は、メッシにほとんど危ない場面を作らせず、唯一の見せ場だった序盤のFKも、GKのヤスパー・シレッセン(Jasper Cillessen)が防いだ。

 デ・ヨングが、今大会初出場となるヨルディ・クラシー(Jordy Clasie)との交代でピッチを退いた後も、メッシは相手の脅威にはなっていないように見えたが、幸運だったのは、オランダが120分での勝利に執着していないらしいことだった。

 メッシはおそらくこれからも、常にマラドーナ氏と比較され続ける。同氏が主将を務めたアルゼンチンは、1986年のW杯メキシコ大会で優勝を飾り、4年後のイタリア大会では決勝で西ドイツに敗れた。

 この日の準決勝で、メッシは代表戦92試合出場を達成し、マラドーナ氏の記録を抜くとともに、同国の代表戦出場数で単独6位となった。

 もちろん、マラドーナ氏は4度のW杯に出場してタイトルを1度獲得している。そして現在、27歳のメッシの前には、この偉大な先達に肩を並べるチャンスが差し出されている。

 個人としての出来は普段の飛び抜けたレベルには届かないかもしれないが、決勝の相手ドイツは、オランダと違って自分たちの能力に自信を持っており、アルゼンチン相手に真っ向勝負を挑んでくるとみられる。となればメッシとしても、決勝ではもう少しスペースが得られることを大いに期待していいはずだ。(c)AFP/Andy SCOTT