【5月16日 AFP】太平洋東部の海面水温が平年より高くなるエルニーニョ(El Nino)現象が主要穀物に及ぼす影響を世界規模で測定した初めての研究が、15日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。

 茨城県つくば市の農業環境技術研究所(National Institute for Agro-Environmental Sciences)の飯泉仁之直(Toshichika Iizumi)氏らがまとめた論文によると、エルニーニョ現象は世界のダイズの生産量を2.1~5.4%増加させる一方、トウモロコシ、コメ、コムギの生産量を0.8%増加~4.3%減少まで変化させるという。

 エルニーニョは太平洋西部の暖かい海水が東部に流れる現象で、例年は乾燥している南米西部の国々の降水量が増える一方で、熱帯西太平洋では干ばつや降雨量の減少がみられ、世界的に波及効果が広がる。エルニーニョ現象のあった翌年には水温が平年より低くなるラニーニャ(La Nina)現象が発生することが多い。

 研究によると、ラニーニャ現象の際には、世界の主要4穀物の生産量は全て0~4.5%の範囲で変化するという。研究は、1984~2004年の穀物生産国の収穫量に基づいている。

■エルニーニョで生産増える国と減る国、増える作物と減る作物

 エルニーニョ現象により、トウモロコシは米国南東部、中国、アフリカ東部と西部、メキシコ、インドネシアで生産量が減少。またインドと中国の一部地域ではダイズ、中国南部とミャンマー、タンザニアではコメ、さらに中国の一部地域、米国、オーストラリア、メキシコ、欧州の一部ではコムギの生産量がそれぞれ減少していた。

 その一方で、エルニーニョ現象は、世界の穀物生産地の約3分の1で収穫量を増加させていた。ブラジルやアルゼンチンのトウモロコシ、米国とブラジルのダイズ、中国の一部地域とインドネシアのコメ、アルゼンチンと南アフリカの一部地域のコムギなどがそれに当たる。

 国連(UN)の世界気象機関(World Meteorological OrganizationWMO)は先月、2014年内にエルニーニョ現象が起きる可能性は「比較的高い」と発表している。

 エルニーニョ現象はおよそ3~7年ごとに起きるが、20世紀末以降には回数が増え、その強さも高まっている。最後に観測されたのは、2009年6月から2010年5月にかけて。(c)AFP