■連星の間で2回の質量大移動

 研究チームのシミュレーションによると、かつてウェスタールンド1-5は、別の若干小さい恒星との連星だったという。

 2個の恒星のうち、主星のウェスタールンド1-5がエネルギー切れを起こし、その外層が小さめの伴星──未来のマグネター──へと移動を始めた。同時に伴星は激しく回転し始め、強力な磁場が形成されることになった。

 だがこの伴星はあまりに巨大化しすぎたため、新たに獲得した質量の大半を放出してしまう。この放出された質量が重力の作用で主星へと戻り、現在のウェスタールンド1-5が形成された。

 やがて伴星は爆発してマグネター系の中性子星となり、ウェスタールンド1-5は星団外へ向けて突き飛ばされたというのだ。

「この物質の交換の過程を通じて、ウェスタールンド1-5の独特な化学的特性が得られるとともに、ブラックホールの代わりにマグネターが形成されるほどに伴星の質量が減らされた」とクラーク氏は述べている。

■マグネターは連星が条件か

 ESOは、この説明が全てのマグネターに当てはまる可能性があると述べている。

「連星の星の1つであることが、マグネター形成のレシピに不可欠な材料なのかもしれない」とESOは声明で述べた。

「超強力な磁場の形成には、2つの恒星間の大質量の移動により生じた急速な回転が必要だとみられる。また2回目の大質量の移動により、マグネター候補星はその死の間際にブラックホールにならない程度にまで軽量化される」(ESO声明)

 同研究は、国際天文学誌アストロノミー&アストロフィジックス(Astronomy and Astrophysics)に発表される予定。(c)AFP/Richard INGHAM