【4月26日 AFP】物理学者アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)が1915年に発表した一般相対性理論は、約7000光年のかなたでの観測史上最も厳しい極限状態での検証にも耐えたとする論文が、25日の米科学誌サイエンス(Science)に発表された。

 論文の主著者で、ドイツ・ボン(Bonn)にあるマックス・プランク電波天文学研究所(Max Planck Institute for Radio Astronomy)の博士課程学生、ジョン・アントニアディス(John Antoniadis)氏を中心として行われた今回のプロジェクトでは、パルサー(中性子星)と呼ばれる高速で自転している大質量星とその伴星の白色矮星が、目が回るような速度で軌道運動をしている様子が観測された。白色矮星は、比較的小型で非常に高密度の星で、外層部の大部分を失って一生を終えつつある星だ。

 「PSR J0348+0432」と名付けられたこの連星系では、パルサーが毎秒25回転で自転しており、その周りを白色矮星が2時間半に1回の速度で軌道運動している。

 こうした異様な相互作用によって、果たして一般相対性理論の限界が浮き彫りになるのだろうか。一般相対性理論では、重力は時空の実体であり、内部にあるものによってゆがむものと説明されている。

 一般相対性理論では、重力によって光の進路さえもが曲げられると予測されている。天文学者らは、この光を望遠鏡で観測することで、これを検証できる。今回の観測には、チリにある欧州南天天文台(European Southern ObservatoryESO)の大型望遠鏡VLT(Very Large Telescope)が使用された。

 アントニアディス氏は「この連星系をESOのVLTで観測し、パルサーの周りを回ることによって生じる白色矮星の光の変化を検出した」と話す。「その場で簡単な解析を行ったところ、このパルサーは極めて重量級の星であることが分かった。質量は太陽の2倍で、現在知られている中で最も重い中性子星であり、基礎物理の実験室として絶好の星だった」

 科学者らは、すでに量子物理学と矛盾しているアインシュタインの一般相対性理論が、極限状態のある時点でもはや成立しなくなるのではないかとみている。

 だが、今回のアントニアディス氏らの観測では、重力放射の量を一般相対性理論が正確に予測していたことが明らかになった。

 同研究所のパウロ・フレイレ(Paulo Freire)氏は「この連星系は、一般相対性理論の破綻が見られるほどの極限状態になっているかもしれないとみていたが、アインシュタインの予測はその検証にもまったく問題なく耐え抜いた」と述べている。(c)AFP