■局地的に進む温暖化を説明

 今回の研究は、西風が極寒の南極大陸をさらに寒冷化させ、同時に大陸で唯一直接吹き付ける南極半島を「例外的な速さ」で温暖化を進行させている理由を説明するものにもなっている。

 風力の増した西風は、南極海から温暖で湿った空気を運び、南極半島──西風が直接当たる大陸唯一の場所──の気温を上昇させる。ここでの温暖化のペースは南半球で最も速く進行しており、科学者たちは氷床の融解および周辺地域での海面上昇に懸念を抱いているという。

 今回の研究で気候モデリングを担当したニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)のスティーブン・フィップス(Steven Phipps)主任研究員は、人類が二酸化炭素を排出してきたことで、20世紀には風速200キロ程度とみられていた西風に変化が生じ、さらに1970年代からは、フロンガスの排出によって引き起こされたオゾンホールの拡大によってこの変化が加速化してきたと説明する。

 同氏は「今後予想される気候変動シナリオのうち中程度のものでさえ、この傾向が21世紀も続いくことが考えられる」と指摘し、オーストラリアの冬はより乾燥することになるだろうとした。(c)AFP