観光ブームで「見世物化」される少数民族、中国
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■「観光客が見たがる幻想」
中国の国内旅行産業は昨年10%拡大し、国内旅行件数は延べ33億件に上り、2兆6000億元(約42兆5000億円)を稼ぎ出した。
所得を生み出すとともに、多様な民族の融和というイメージの促進を狙う当局は、少数民族を訪ねるツアーを含め旅行産業の振興を図っている。中国人口の92%は漢族だが、政府は少数民族を優遇する政策を採用し、テレビ番組や政治イベントに民族衣装姿で登場することを奨励している。
過去数十年間、貴州省とそこに暮らす少数民族たちは、共産党が押し進めた農業集団化や毛沢東(Mao Zedong)の文化大革命(Cultural Revolution)による混乱に苦しめられたが、現在は省内の民族の文化資源を積極的に活用しようとしている。貴州省の観光業収入は2012年には30%増え、1860億元(約3050億円)に達し、同省の経済規模の4分の1を超えるまでに成長した。
同省に展開する旅行会社は、精巧な銀製の装身具を身につけた女性たちや、木造家屋やろうけつ染め、伝統劇、水祭りなど、民族色あふれたプランを提供している。
貴州省の観光業を研究する米エモリー大学(Emory University)の人類学者、ジェニー・チオ(Jenny Chio)氏は、観光客の訪問が道路の整備や収入機会をもたらす一方で、静かな村々を混雑したテーマパークに変えてしまい、観光客が持つ先入観に合わせることを地元の人々に強いていると指摘する。これは、隣接する雲南(Yunnan)省の麗江(Lijiang)や香格里拉(シャングリラ、Shangri-La)といった観光地が浴びている批判でもある。
「ある場所が観光地となると『観光客が見たがる幻想』を維持するために、そこで暮らす人々の時間はある時点で『凍結』されてしまう」とチオ氏はいう。