■中国政府が予想していなかった事態

 セイヤー名誉教授は、国境を接する共産主義国家の中国とベトナムの関係の歩みが逆戻りしたことを示したとして、中国の先日の行動は意外感をもって受け止められたと説明する。両国は1979年の中越戦争で短期間交戦したものの、ここ数か月間で関係改善が大きく進んでいた。昨年10月には中国の李克強(Li Keqiang)首相がベトナムの首都ハノイ(Hanoi)を訪問し、両国が2015年までに二国間貿易を600億ドル(約6兆1000億円)規模に拡大する方針を打ち出していた。セイヤー名誉教授は、中国の掘削表明が「青天のへきれき」であり、「予想外かつ挑発的で、違法でさえある」と語った。

 中国が今回ベトナムに強硬な姿勢を示したことについて、シンガポールのS・ラジャラトナム国際研究院(S. Rajaratnam School of International Studies)のリー・ミンジャン(Li Mingjiang)准教授は、習近平(Xi Jinping)国家主席率いる現在の中国指導部が、過去の世代に比べて「高圧的な手法を取る傾向」が強いことを示唆していると指摘。ただベトナム政府の強い対応は、域内の中国に対する態度が硬化していることを物語っており、中国政府はこうした事態を予想していなかったとみられる、と付け加えた。

 リー准教授は「中国に石油掘削装置の移動を迫るため、ベトナムがあれだけの船を派遣するとは(中国は)おそらく計算していなかっただろう」と述べた上で、ベトナム政府は、中国政府に黙認のシグナルを送ることは回避しなければならなかった、と付け加えた。「基本的にベトナムは、強い対応を取らなかった場合の結果に甘んじることはないだろう」(c)AFP/Felicia SONMEZ