南シナ海でベトナムに強硬姿勢、中国の狙いは 専門家が分析
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■米国に「挑発的」と判断されるリスク
ベトナム当局は今月3日以降、同国の巡視艇が中国船から放水されたり、何度も体当たりされたりといった妨害を受け、負傷者が出たと発表。これに対して中国政府は、「破壊的な」ベトナム船から171回も衝突されたと反論した。
中国とアジア近隣諸国の船舶が海上で小競り合いを展開した事例は、これにとどまらない。中でも日本とは東シナ海の尖閣諸島(Senkaku Islands、中国名:釣魚島、Diaoyu Islands)の領有権をめぐる緊張が続いている。ソートマン准教授によると、日本は中国が1970年代までの長い期間、尖閣諸島に全く関心を示していなかったと主張している。
中国としては、そのような主張が尖閣以外の場所についても持ち出されることは避けたいだろう。ソートマン氏は「中国は政治の要件と法律の要件の板挟みになっている、と私は考えている」とコメントした。
ベトナム情勢に詳しいオーストラリア国防大学(Australian Defence Force Academy、ADFA)のカール・セイヤー(Carl Thayer)名誉教授は、中国が今回行動を起こしたタイミングについて、先月のオバマ米大統領のアジア歴訪への報復ではないかとの観測を呼んでいると語った。アジア歴訪では、訪問先の日本、韓国、マレーシア、フィリピンのいずれでも、領有権に関する中国の主張が大きなテーマになった。
中国の一方的な行動は、昨年11月に東シナ海上空を中心に「防空識別圏(ADIZ)」を設定した時と似ていることから、中国がアジアで「挑発的」な行動を取っているという見方を米国が強めるリスクがある。HKUST中国多国間関係センター(Centre on China's Transnational Relations)のデービッド・ツバイク(David Zweig)所長は、「もし私が米国人なら、『中国の強硬姿勢をあらゆる人に実感させてくれてありがとう』と言うかも知れない」と語った。「この地域の至るところにある緊張状態が、中国が強国になる前に起きていなかったのは明らかだ」